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第四章未来への扉

10.天使の中の悪魔

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かつての婚約者だったフェミリーナに似ているが似ていない。


「お前は…誰だ」

「貴女に人生を狂わされたフェミリーナですよ」


美しい笑みを浮かべながらもその瞳は氷のように冷たく、笑っているとは思えない。


「貴様はフェミリーナではない。あれは私にそのような…」

「そうのような…なんです?心優しく儚いフェミリーナは自分を追い詰めることはない?なんせ弱い女だから何を言っても恨むはずがない…そう言いたげですね?ふざけんなよのクソったれが!」

「あっ!」

「お父様!」

「貴方!」


牢屋から拳が飛んでくる。
鳩尾に一発受けた私はそのまま倒れこむ。

「ちょっと、牢屋を壊さないでよ?それから罪人を使い物にしないでよぉ?」

野太い声で女口調で話す修道女が現れる。

「なっ…化け物!」

「来ないで!」


背後で妻とマリアナは叫ぶ。

牢屋の前に現れたのは筋肉質の修道女とメイド服を着た男だった。

何なんだ!


「あらごめんなさい。でも、どうしても我慢できなかったのよね?」

「もう、私の娘はやんちゃね!」

「ごめんなさいクララ、レヴェッカ」


よく見ると、監視役がいないと思ったら気配を消してたのか?

周りを見渡すと灯を持って現れるが、すべて似たような人種が周りを囲んでいた。


「本当に困った子ね?少し苛め過ぎよ」

「でも、本当に頭が空っぽね?十数年前に捨てた婚約者が変わらない姿でいるはずもないのに…しかも、奥方は悲鳴を上げて頭を抱えて震えているわ…馬鹿じゃないのかしら」

「本当よね…でも、これで満足したの?母親の無念を晴せたかしら?」


母親だと?


「本当に、頭の悪い男。母上と間違えるんだもの」

「まさか…貴様は?」

「お察しの通り、私の名前はフェリシア。フェルミーナの息子よ」

「は?」


娘ではなく息子だと?

「何を馬鹿な…」

「正真正銘私はフェルミーナの息子。あの後母は幼い妹を抱いて修道院に入ったけど、その一年後に貴族の人に見初められて結婚したのよ。まだ見習いだったから還俗も許されたわ」

「では…」

「けれど、アンタ達が母に精神的な苦痛を与え、既に病にかかっていた。母はアンタ達に殺された。不義を働き、母や祖父母を殺し、多くの人の人生を狂わせながら、自分達は真実の愛を貫き酔いしれていると聞いたときは激怒したわ…何故浮気をして母を踏みつけた悪人が幸せなのかってね?」


笑いながらも冷たい視線が突き刺さり、体が強張る。
フェルミーナと瓜二つの顔で憎しみを抱くような目を向けるそれから目を反らしたくなった。


だが、目を反らすことも許されなかった。



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