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第三章.高潔の条件

29.本当の支配者

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知らぬが仏と言った所だろうな。
本当の事を言うわけには行かないのが、少し哀れだな。


「兄上、漢女部隊は…」

「清く、正しく逞しくがモットーの彼女達…いや、彼等と言うべきなのか?」

「別名マッチョ組。見た目は男で心は乙女の集団を見た当初、温室育ちの貴族は刺激が強すぎて失神する連中もいるとも言われているのですが」

「ああ、ある意味地獄だ。女は勿論、最悪なの若い男だ」

そういえば先に牢獄行になったあの馬鹿はどうなったのだろうか?



まぁ、今は考えるのは止めておくとしよう。



「それにしてもたいしたものだな」

「何がだ?」

「オリヴィア嬢もそうだが、ベアトリス嬢だ」


彼女はまだ幼さが残ると言うのやり手だ。
シャリエール伯爵家の領地を実力で奪い取り、爵位と領地を奪い取るのも時間の問題だろう。


今回の一件で、彼らは爵位召し上げだけでは済まないだろう。
そうなればシャリエール家の領地は前シャリエール伯爵が代理として領主となるだろう。


だが、既に子爵の地位を賜り商会を広げ、確実に実力をつけている。
シャリエール伯爵領地を奪うのも時間の問題だと聞かされているから、彼女は女伯爵を賜るだろう。


そうなればニコルとの婚約も問題ない。
元より、王族でありながらも母親がお針子という立場に過ぎなかった。

ジルベルトの母親は平民ではあるが、貴族と同様の教育を受け、資産家でもあるので立場が異なる。

何より、王宮に入る前に父上から爵位を与えられている。
元は伯爵家に養女に迎えた後に父の寵妃として迎えられたのちに、侯爵夫人となる程の功績を残したのだが、ニコルの母親は平民で貧しい生まれだった。


そんな理由もあってか後ろ盾もなかったが、ベアトリス嬢が女伯爵となった後ならば誰も文句は付けられないだろう。


なんとも用意周到だが、恐ろしいな。


「兄上?どうしました?」

「俺は巫女殿が恐ろしくなってきた」

「はい?」

我が国の二大勢力の女性はかなり強い。


だが、それ以上に恐ろしいのは、権力と才を持つ令嬢を手なずけているオリヴィア嬢ではないだろうか?


特に社交界で名だたる令嬢は扱いにくい事で有名なのに、味方につけている。
あげく、ベアトリス嬢は高位精霊の加護を持つ令嬢で、王族の中で一番の腹黒のニコルも味方につけている。


彼女が本気を出せば国を乗っとることも簡単にできてしまうのではないか?と不安を抱いてしまった。


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