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第三章.高潔の条件
19.反論
しおりを挟むずっと音信不通で、私が公爵家に養女に迎えられても顔を合わすこともなかった。
今さら愛情なんて感じていない。
でも、自分を生んでくれた人なのだから憎いとは思っていない。
「オリヴィア…なんてことを」
「お前は…」
けれど、それはあくまで私がそう思っている事であって、元両親はそうではない。
私を目の敵にしていた。
「姉を追い落とすなんて、貴女は何処まで卑劣なの」
「私達を何処まで幻滅させればいいのだ。今まで育ててやった恩を忘れ、このような仕打ちを」
「恩?」
私は元両親の言葉に笑ってしまった。
確かに育ててもらった事には感謝しているけど、金銭的なことだわ。
私を育て、愛情を注いでくれたのは元両親ではなくお祖父様と亡くなったお祖母様だわ。
「金銭的な支援のことでしょうか?それとも、自分達の命令通りに動く娘の事を言っているのですか?」
かつて私は彼らの都合のいい操り人形でしかなかった。
望みどおりにしなければ罵倒し、落胆し、悪い子だと言われてきた。
私は意思を持つ事すら許されなかったのだ。
「なんてことを!貴女の事を思えばこそ、私達は…」
「そうだ、親心の解らないとは!」
「親心?そんなもの感じたことはありません。私の誕生日は勿論こと、私に一切の関心もなかったのに。領地経営の面倒ごとは全て押し付け…私が使い物にならなくなったらあっさり捨てた。偽りの家族の癖に」
今思えば、この二人は親としても人としても弱過ぎた。
大人としても親としても成長しきっていなかったのかもしれない。
「貴女にとって完璧であることがすべてで、少しでも完璧から離れれば不要だった。私は嫌というほど理解しましたわ。私を愛してくれたのは祖父と妹だけ」
「何を言うの!」
「実際私が死にかけた時、どう思われましたか?」
「そっ…それは」
ベアトリスは私を心配して駆けつけてくれた。
その間もあの手この手を使って探し回ったり、教会にお祈りに行ってくれていたと後から聞いた。
でも彼らは?
「その顔を見ると図星ですね。私達の間に愛情の欠片もなかった…なのに私は馬鹿ですわ。愛情を得る為に努力した。ですが…その努力で友人と本当に愛する人と出会えましたわ」
私がして来た努力は無駄ではなかった。
「そしてベアトリスを生んでくださり感謝しております」
私にとってあの子は守るべき妹であり、心の支えだった。
「あの家でベアトリスがいなければ私は心が死んでいたでしょう。私にとって本当の姉妹はベアトリスだけでした」
「なっ…今まで愛情を注いでやったのに!その恩を忘れるなんて」
「お前など生まれなければ良かったんだ!」
逆上した二人は私が反抗的な態度を取った事が許せず声を荒げ癇癪を起そうとしたが、私は冷めた目で見ているだけだった。
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