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第三章.高潔の条件
18.憎しみの視線
しおりを挟む誰もがお祝いの言葉を述べる場所で一人だけ異論を唱える声が聞こえた。
「認められませんわ!」
視線は言うまでも、声を放った人物に注がれる。
「なんと愚かな…」
傍でジュリアス様が冷たい視線を向け、アレキサンドロス様も苦虫を嚙み潰したよう表情を向けながら。剣を握り、私の護衛騎士を務めてくださっているベンノ様も守るように傍にいてくださった。
「今すぐ首を切り落としたいのだが」
「姉上、剣が汚れますよ」
ジルベルト様も何時も以上に険しい表情になるが、当然かもしれない。
こんな場でこんな発言をすれば、怒っても仕方ないが。
「シャリエール令嬢、貴女はご自分が何を言ったか解ってて言ってますの?それとも病故に頭がおかしくなって妄言をしているのかしら?」
「なっ…私は病など!」
「では、病ではないと…その上での発言と言うのであれば許されませんわ」
お姉様が前に立ち私を庇う様に告げる。
「未来の王太子妃に無礼を働くとは許されませんわよ」
「ええ、伯爵令嬢如きが、公爵令嬢であり、王太子妃に無礼を働くなんてありえませんわ」
「真面な教育をされていないのかしら?中級階級の賊民風情の私でもその程度のことは幼少期に習いました?伯爵家はそのような教育はされないのでしょうか?」
マルガリーテ様が威厳を持ちながら告げ、礼儀がなってないとナウシカ様が咎めで、アナスタシア様が貴族云々の問題だと告げるけど、賊民とはどういうことなのかしら?
「なっ…無礼な!平民の分際で」
「なっ!」
アナスタシア様になんてことを。
「マリアナ様!今の言葉をお取消しください。彼女は子爵令嬢であり、立派な貴族令嬢ですわ」
「所詮は成り上がりの癖に!オリヴィア、貴女は貴族の恥さらしだわ。こんな下級貴族の者を庇うなんて!」
私の言葉に耳を傾けることもせず、マリアナは私を責めた。
「伯爵以下の貴族も立派な貴族です。彼らは私達を支えてくださってます。男爵、子爵は自ら財源を確保し、国を潤すために尽くしてくださっております…彼等を侮辱するような真似は許されません」
「もう王太子妃気取りなの?私からすべてを奪って…なんて強欲で最低なの!」
奪ってなんていない。
私は最初から貴女から何も奪ってないのに。
「私は貴女に責められるような振る舞いをした覚えはありません」
「なんですって!」
「私は一度だって貴族令嬢として恥ずべき行動をした覚えはありません」
私はずっと家に恥をかかせないように努力してきた。
魔力が少なくとも、家の為に尽くそうとしてきたつもりだし、ここまで責められる理由はない。
「シャリエール嬢、貴女は王族を下目に見ているのが良く分かった。それとも婚約破棄をされたことの仕返しか?差から恨みにしてもやり過ぎではないか?シャリエール伯爵」
静観していたジュリアス様が離れた場所にいた元両親に告げた。
久しぶりに見る元両親は私を見てすぐに憎しみを向けていた。
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