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第三章.高潔の条件

15.二人の女帝

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賑わう華やかな場所で視線が痛かった。
気の所為ではなく、すれ違う人達が私を見ている。


やっぱりこれの所為かしら?


「今から緊張をしてどうするすのだ。こんなものはすぐに慣れる。というか慣れてもらわなくては困るのだがな」

「えっ…」

「ジルベルトと結婚したら、もっと大勢の場で狸親父と腹の探り合いをしなくてはならないのだから」


さらりととんでもない事を言われた気がするのだけど。

「物事には順序という者があるのですよ?まったく…」

呆れた表情で見る麗しい女性はこの国の現王妃で、ジュリアス様の母君である方。

言葉では常識的な事を言っているけど。


「王妃陛下…失礼ながらこれは」

「やはり、このドレスにはティアラが必要ですわ。これで完璧よ」

「いえ、そうではなくて」


鏡に映る私は誰?と言いたくなるほど完璧に着飾っているけど。


ティアラを身に着けて許されるのは王位継承権を持つ女性か時期王太子妃、もしくは女王陛下だけだった。


なのに何故私が?


「あら?このティアラじゃご不満からしら?」

「滅相もありません…そうではなくてですね」


このティアラを簡単に頭に飾っていいことではないのに、王妃陛下はまったく聞いてくださらない。


「ドレスも少し飾り気はないけど、そんじょそこらのドレスとは違いますのよ」

「すごく似合っているぞオリヴィア!以前は白いドレスは鳩ぐらいにしか思わなかったが」

「貴女は王女という立場を、もっと理解なさい」


王妃陛下に物怖じしないなんて、流石というべきだけど。

「まったく、少しばかり自由にさせ過ぎましたわ…王家で最もと筋が良いと言うのに」

アレクサンドラ様を見ながらため息をつく王妃陛下にシャンパンを差し出される。


「素晴らしいお.個性と思いますわ。個性を大事にされたサニー様の教育の賜物ではありませんか」

「侯爵夫人…」

傍に控える美しい女性。
ジルベルト様の生母であり、平民でありながらも侯爵夫人の地位を得た人物でもある。


本来ならば正妃と側妃の間柄であるが、二人の関係は悪いものではなかった。

むしろ親友のような関係だと聞かされたのは最近の事。


その理由が、ジルベルト様のマルティーヌ様は側妃としての立場を心得、王妃陛下に礼を尽くしていた。


他の側妃は王の寵愛を受けることで必死で、王妃陛下を見下すような態度も取っている。

その理由として、王妃陛下のサニエル様の祖国は決して豊かな国ではなかった。
他国王女と言えど、下目に見てくる貴族夫人も多かったし、改革をしようにも資金が問題してできないことも多く、環境も違う他国で苦労していたとか。

しかも敵対する貴族達から馬鹿にされ、味方が居なかったようだが。

王妃陛下に手を差し伸べたのが、寵妃でもあるマルティーヌ様だった。
表向きは寵妃となっているが、実は王の補佐であり、王妃を守る存在だった。


けれど、正妃と側妃同士ならば憎しみ合うのに、ある意味心が広いと思ってしまった。

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