偽りの家族を辞めます！私は本当に愛する人と生きて行く！

第三章.高潔の条件

9.運命ではなく

私はあの日、一度だけ神に背く行為をした。


そして、訴えた。
もし、ベアトリスが生きながらえるならば。


この先、どんな辛いことも耐えて見せると。



「魔力は心に反応します。特に慈悲の心を持ってすれば威力は倍増するでしょう」

「では…」

「貴女様は慈悲の心を持って、妹君をお救いになった。己の命を対価とすることも厭わず…その思いに感銘した精霊は妹君に更なる祝福を与えたのです」


ベアトリスが並外れた魔力を持ったのは私も関係していた？


「しかし、同時に水の精霊は強い力を憎しみの為に使えば負担がかかるようにしました」

「それは…」

「はい、悪事に力を使わない為です」


ベアトリスが怒りや憎しみを抱き、魔力を暴走させようとした時。

必ず苦しんでいた。



「貴女様は聖女を光に導き、加護を得る妹君の為に戦われた。力に屈することなく我が下僕を鎮めることまで成し遂げた…貴女以外に誰がいましょうか」

聖獣様は私に頭を預けすり寄る。


虎なのに、猫のようだと思った。


「リヴィア様と私が出会うのは偶然ではなかったのですね」


「マリア…」

「あの日、私が出会ったのも」


全てが運命だったとは思わない。

けれど…


「私は運命に従ったんじゃないわ。偶然が重なったのよ。私はマリアだから好きになったの。他の誰でもないわ」

「私もです…」


もしマリアでなかったら、どうなっていただろうか。

きっと今日まで私の心を支えてくれなかったかもしれない。


「なんて感動的なのかしら」

「サマンサ様、ティッシュですわ」

「ありがとうございます。マルガリ―テ様」


未だに私が特別な存在だと信じられないが、受け入れて行こう。

魔力が失われてしまった理由も解って良かった。

私は出来損ないじゃなかったんだ。


そう思った矢先。


「はーはっはっはっ！！そうか、やはりそうか。解っっていたぞオリヴィア。やはりお前は私の伴侶となるにふさわしい女だった。聖獣を飼いならす程ならば王族以上ということになる！」


大笑いをする馬鹿が失言をし続けていた。


「この男、燃やしていいかしら」

「ええ、馬鹿すぎて泣けてきますわ。しかも醜い」

「なんでしたら毒を盛って差し上げますわ。遺体は父に頼んで処理しますわ」


空気を全く読まないブライトンにお姉様は炎で焼き殺す準備をし。
醜いものを嫌うマルガリーテ様は汚い物を見るような視線を送り、ナウシカ様は懐から毒薬を取り出した。


「浄化しましょう」

「聖女様が汚れますので、私にお任せを」

「頼みますわ騎士様！」


マリアが光魔法で浄化という名の雷を落とす準備をして、クローネと騎士様も武器を構えている始末だった。


本当に馬鹿だわ！