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第二章.新たな婚約

29.転落人生

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旅先での不幸な事故が相次いだ。

全ては事故だったのに。


「ふざけないで!お姉様を見捨てて逃げて来たなんて信じられない!」

「止めなさい。仕方ないでしょ」

「そうだ…」

そうよ。
私は何も悪くないわ。

オリヴィアの事は不幸な事故だった。

何より、お荷物になったあの子が悪いのよ。


「お姉様はどうなってもいいの?やっぱり最低だわ」

「ベアトリス、何処に行くんだ!」

「解らないの!今からお姉様を助けに行くのよ」

「馬鹿を言うんじゃない!」

お父様が珍しく声を張り上げる。
魔獣の元に行くなんて正気の沙汰じゃない、馬鹿がすることだわ。

「そんなことをして何になる。オリヴィアは仕方ない」

「もう無理よ…」

「ふざけないで!お姉様が死んでもいいの…なんて最低な人達なの!」


ベアトリスの目の色が変わり、怒りにより、邸の窓が割れ始める。



「何処までの最低な人達…最初からお姉様なんて必要なかったのね。あんた達なんて」

「きゃああ!」

「止めなさいベアトリス!」

魔力が暴走し、風がすべてを壊そうとする。
窓ガラスは割れてしまい、壁に亀裂が入り、床は揺れだす。


「アンタが…お姉様を」

手から炎を出そうとする。

「何をする気」

「お姉様の仇!」

「やめっ…」

これがベアトリス?

私は初めてこの子に恐怖心を抱いた。
今までは少しだけ魔力が強いだけの、妹としてしか認識を持っていなかった。


「いや…やめて」

「お姉様の仇!!」

体からあふれ出る炎の魔法に私は抵抗できなくなったと思った矢先。


「止めなさいベアトリス!」

「お祖父様!」

邸に入って来たお祖父様が止めに入る。

「止めないで…私はもう、我慢できない。こんな屑達の所為で…私のこの世でたった一人のお姉様を傷つけられたのよ!」

何を言っているの?
たった一人のお姉様って…私も貴女の姉なのよ。

「ならば猶更だ。こんな真似をしてオリヴィアが喜ぶのか。お前を慈しんできたあの子が、喜ぶのか。こんな奴等殺す価値もない」

「生かしておく価値もないわ。この悪女を殺して私も死んでやるわ…ゲホッ!」

その時、ベアトリスは咳き込み苦しみだす。

「感情のまま魔力を暴走させれば、お前の体が壊れる…解っているのだろう」

「でも、私はお姉様の為にこいつらに裁きを下さなくちゃ。こんな女の所為で今まで虐げられて来たのよ。私はお姉様の仇すら…」

「オリヴィアは結界魔法を持っている。簡単に死ぬはずはない。そうだろう」

「お祖父様…」


魔力の暴走が止まり、ベアトリスは泣き崩れる。


「ああ、可哀そうに…ここまで追い詰められて」

「お祖父さ…」

「気安く触れるな汚らわしい」

私はお祖父様に手を伸ばそうとするも弾かれる。

「父上…」

「お前達には愛層が尽きた。オリヴィアはお前達の道具にすぎなかったのか…もはや親子ではない。貴様らとは親子の縁を切る…二度と私の前に現れるでない!」

「お待ちください!」

ベアトリスを抱き上げながらお祖父様は転移魔法で消えてしまった。


そしてその翌日、お祖父様は心労がたたり倒れたとの報告が来た。

社交界では、様々な噂流れ。
あろうことにも、私が妹を見殺しにしたという不名誉な噂が流されてしまった。

外に出れば後ろ指をさされ、耐え忍ぶ日々を送ること数日。

我が家にジュリアス様と姉君のアレキサンダー王女が訪れた。


この時私は、お二人が守ってくださると思っていた。


なのに突きつけられたのは婚約解消の件だった。


話し合いの場を設けられたが、私は酷い裏切りを受け、あげくの果てには婚約解消から婚約破棄になり、社交界で笑いものとされてしまった。




なのにどうして――。


「何故…オリヴィアが!」


傷物になったはずのオリヴィアと再会するも許せないことを聞かされた。


第三王子殿下の妃に見初められ、今か公爵家の養女に迎えられた?

お姫様のように守られちやほやされるなんて許せない。

そこは私の居場所だったはずなのに!



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