61 / 137
第二章.新たな婚約
26.哀れな妹と傲慢な妹
しおりを挟む長女である私を差し置いて魔法省や宮廷師団からも一目置かれるようになったベアトリスは社交界デビューをする前に高位貴族の後ろ盾を得てしまった。
ベアトリスの素行の悪さはその日を境に目立つようになった。
少しちやほやされていい気になるなんて論外だと思ったけど、お父様とお母様がいるところでは令嬢らしく振舞っていた。
「ベアトリス、最近はテーブルマナーが上達したそうで。先日のパーティーでも、侯爵様からお褒めのお言葉をいただきましたわ」
「ああ、感心していたぞ」
「はい、オリヴィアお姉様が私の為にレッスンをしてくださったんです」
なんなの?
わざとオリヴィアを強調していた。
「そうなの?」
「いいえ、ベアトリスは覚えが速かっただけです。この子は頭がよく、邸内の本はすべて暗記してしまっていますわ」
「まぁ、マリアナですらできなかったことを!」
余計なことを言うんじゃないわよ。
出来損ないの癖に!
「だけど、あまり学問に夢中になるのはどうなのかしら?」
貴族令嬢の基本は美しくある事よ!
そして殿方に愛されることが最優先なんだから。
学問なんて女のすることじゃないわ。
「貴族の娘が学問などはしたないわ。教養の範囲内に止めなくては…」
「そうね、マリアナの言うことも一理…」
「侯爵夫人は私に沢山勉強なさいといいましたわ。お母様は侯爵夫人の事も否定なさるの?」
「え…」
なっ…!!
この愚妹は何を言っているの!
「これまで女性は学問に精を出していなかったけど、新しい時代を築くには女性も学ばなくてはダメだと言ってました。特に女で爵位を持つならばと」
「「「爵位!」」」
何を言っているの?
女性で継承以外で爵位を与えられるなんて。
「ベアトリス、本当なの?」
「はい!今後の為にもと…士爵を賜ることになりましたわ!」
「おめでとうベアトリス。素晴らしいわ」
呆然とする私は何を言っているのか解らない。
隣で固まっている二人もそうだろう。
「お姉様、私は史上最年少で爵位を得ました。お姉様に楽をさせてあげます。侯爵夫人がもっと功績を上げれば男爵の地位を用意するとおっしゃってくださったんです」
「女男爵なんてすごいわ」
「はい」
私達を無視して、盛り上がる。
何で笑っているのよ?
ベアトリスはオリヴィアを利用して上手くのし上がっているのに。
そんなことも解らない程馬鹿なのかしら。
苛立つと同時に哀れだと思った。
オリヴィアは社交界で殿方にも愛されず、哀れな一生送るのね。
婚約者のブライトン様とも仲が悪いわけじゃないけど、オリヴィアを女性として好いている訳じゃない。
だって美しくなく地味で目立たないオリヴィアを愛する殿方なんていないもの。
可哀そうなオリヴィア。
傲慢で自分勝手なベアトリスに利用されても、気づかない。
馬鹿で愚かでどうしようもないわ。
だから私が助けてあげないと。
ベアトリスから引き離さなくてはと思っていた。
64
お気に入りに追加
5,462
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された公爵令嬢は本当はその王国にとってなくてはならない存在でしたけど、もう遅いです
神崎 ルナ
恋愛
ロザンナ・ブリオッシュ公爵令嬢は美形揃いの公爵家の中でも比較的地味な部類に入る。茶色の髪にこげ茶の瞳はおとなしめな外見に拍車をかけて見えた。そのせいか、婚約者のこのトレント王国の王太子クルクスル殿下には最初から塩対応されていた。
そんな折り、王太子に近付く女性がいるという。
アリサ・タンザイト子爵令嬢は、貴族令嬢とは思えないほどその親しみやすさで王太子の心を捕らえてしまったようなのだ。
仲がよさげな二人の様子を見たロザンナは少しばかり不安を感じたが。
(まさか、ね)
だが、その不安は的中し、ロザンナは王太子に婚約破棄を告げられてしまう。
――実は、婚約破棄され追放された地味な令嬢はとても重要な役目をになっていたのに。
(※誤字報告ありがとうございます)
【完結】愛されなかった私が幸せになるまで 〜旦那様には大切な幼馴染がいる〜
高瀬船
恋愛
2年前に婚約し、婚姻式を終えた夜。
フィファナはドキドキと逸る鼓動を落ち着かせるため、夫婦の寝室で夫を待っていた。
湯上りで温まった体が夜の冷たい空気に冷えて来た頃やってきた夫、ヨードはベッドにぽつりと所在なさげに座り、待っていたフィファナを嫌悪感の籠った瞳で一瞥し呆れたように「まだ起きていたのか」と吐き捨てた。
夫婦になるつもりはないと冷たく告げて寝室を去っていくヨードの後ろ姿を見ながら、フィファナは悲しげに唇を噛み締めたのだった。
お言葉を返すようですが、私それ程暇人ではありませんので
結城芙由奈
恋愛
<あなた方を相手にするだけ、時間の無駄です>
【私に濡れ衣を着せるなんて、皆さん本当に暇人ですね】
今日も私は許婚に身に覚えの無い嫌がらせを彼の幼馴染に働いたと言われて叱責される。そして彼の腕の中には怯えたふりをする彼女の姿。しかも2人を取り巻く人々までもがこぞって私を悪者よばわりしてくる有様。私がいつどこで嫌がらせを?あなた方が思う程、私暇人ではありませんけど?
異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~
水無月 静琉
ファンタジー
神様のミスによって命を落とし、転生した茅野巧。様々なスキルを授かり異世界に送られると、そこは魔物が蠢く危険な森の中だった。タクミはその森で双子と思しき幼い男女の子供を発見し、アレン、エレナと名づけて保護する。格闘術で魔物を楽々倒す二人に驚きながらも、街に辿り着いたタクミは生計を立てるために冒険者ギルドに登録。アレンとエレナの成長を見守りながらの、のんびり冒険者生活がスタート!
***この度アルファポリス様から書籍化しました! 詳しくは近況ボードにて!
【完結】結婚式当日、婚約者と姉に裏切られて惨めに捨てられた花嫁ですが
Rohdea
恋愛
結婚式の当日、花婿となる人は式には来ませんでした───
伯爵家の次女のセアラは、結婚式を控えて幸せな気持ちで過ごしていた。
しかし結婚式当日、夫になるはずの婚約者マイルズは式には現れず、
さらに同時にセアラの二歳年上の姉、シビルも行方知れずに。
どうやら、二人は駆け落ちをしたらしい。
そんな婚約者と姉の二人に裏切られ惨めに捨てられたセアラの前に現れたのは、
シビルの婚約者で、冷酷だの薄情だのと聞かされていた侯爵令息ジョエル。
身勝手に消えた姉の代わりとして、
セアラはジョエルと新たに婚約を結ぶことになってしまう。
そして一方、駆け落ちしたというマイルズとシビル。
二人の思惑は───……
本物の恋、見つけましたⅡ ~今の私は地味だけど素敵な彼に夢中です~
日之影ソラ
恋愛
本物の恋を見つけたエミリアは、ゆっくり時間をかけユートと心を通わていく。
そうして念願が叶い、ユートと相思相愛になることが出来た。
ユートからプロポーズされ浮かれるエミリアだったが、二人にはまだまだ超えなくてはならない壁がたくさんある。
身分の違い、生きてきた環境の違い、価値観の違い。
様々な違いを抱えながら、一歩ずつ幸せに向かって前進していく。
何があっても関係ありません!
私とユートの恋は本物だってことを証明してみせます!
『本物の恋、見つけました』の続編です。
二章から読んでも楽しめるようになっています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる