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第二章.新たな婚約

5.愛の証

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「絶対反対だ!」


昼食を終えた後、ジルベルトは嫌悪感を隠すことなく言い放つ。


「学園に戻るだと?危険すぎる」

「まぁ、話を聞かんか」

「聞くまでもありません、姉上!」


普段、冷静なジルベルトがここまで興奮する気持ちは解らないでもない。

しかし、何時までも籠の鳥なのは酷だ。


「ずっと、ここで引っ込んでいるわけにも行くまい」

「だからと言って、何故今何です?」

「怪我も回復してきている。それに今は好機だ」

ジルベルトは、噂が収まってからが良いと言っているが、私は違う。

そろそろ王都でも噂が流れているだろう。
馬鹿をした姉と元婚約者の悪い噂が良い感じに広がっている。


学園でもジュリアスが婚約解消をしたことが広がるも、マリアナは被害者ではない。

加害者として噂になっているはずだ。
なんせ妹を捨てて我が身可愛さに逃げて来たのだから。

あげく、今回の事件の原因を作ったのはマリアナだ。
最初から王家が用意した馬車を使っていればこんな騒ぎにならなかったし、道中もオリヴィアが対応してくれてたのに、余計な事をしてさらに大事になったのだ。

しかも道中で私の婚約者を侮辱し、暴言を吐き続けたのだからな。

その件に関しても噂を流させ、騎士団を侮辱したとことも流した。
王家直属の近衛騎士は、騎士であることを誇りに思っているし、騎士の妻も同じだ。

近衛騎士や騎士団の侮辱は、すべての騎士への侮辱に値する。

マリアナは我が国の騎士を敵に回したのだ。


「しかしお嬢、姫さんが傷つく可能性があるなら他の奴は反対しますぜ?」

「うむ、近衛騎士は猛反対している。もうアイツ等を虜にするとは流石」

「感心しないでください!」

「嫉妬深い男は嫌われるぞ」

「姉上!」

まったく、普段の鉄壁の理性は何処に行ったのだ。

まぁ、可愛いからいいけど。


「お嬢、本題に」

「うむ、本題だが…現在王都では馬鹿共の噂で持ちきりだ。その噂を乗じてオリヴィアには我が婚約者殿を護衛として同行させる。勿論、第二騎士団を数名同行させる」

「何故数名も?」

「まだまだ甘いな」

貴族達は噂が大好きだ。
だから、こちらが少しでも匂わせるような行動をすれば勝手に誤解をしてくれる。

「いいか、近衛騎士を護衛にできる令嬢は通常王族か、その親族だけだ」

「存じております」

「ならばオリヴィアに数名の近衛騎士を護衛にして、王族と同じ対応で送迎をすればどうなる?」

「あ…」

私の考えが理解できたようだな。
オリヴィアには王族と同じ特別待遇を用意する。

「彼女は私の婚約者殿の命の恩人だ。その時点で特別待遇をされても当然だ‥そこで噂好きな連中には私が傍に置きたがっていると匂わせる…まぁ、オリヴィアが望むなら養女に迎えるが」

「あっ…姉上」

「一番いいのはお前が口説くことだ。未だに手を握ることしかできんとは…情けない」


療養期間に口説けと言ったのに、何も進展がないとはなんと奥手か。

「私は婚約者殿には愛を毎日告げたぞ」

「姉上の場合は愛というよりも拳で告げたんじゃないですか!この熱血漢が」

「フッ、愛を伝えるには拳が一番だ」


飾った言葉では偽りに聞こえるからな。
だから私は婚約者殿に求婚する時に決闘を申し込んだのだ。


「ベンノ兄上が哀れです」

「だが、婚約者は私にメロメロだ」

今では私を溺愛してくれているので問題はない。


まぁ、私の話はさて置きとして。

「早く口説け。そうすればまどろっこしい真似は必要ない。正式な婚約者として発表できるんだからな」

「そんな無茶な…」

「ならば二コルの婚約者にしてもいいんだぞ?」

「なっ!」

真っ青になるジルベルトは本当に素直だな。
普段は大人顔負けで政治の話をすると言うのに、初恋の君には幼いな。


「冗談じゃありません!オリヴィアは私の妃にします!誰にも渡さない…オリヴィアを愛しているんです!誰にも渡さない!」


「ほぉ?本当か?偽りはないか?」

「当たり前です!彼女は俺の婚約者にします…オリヴィアが手に入るならすべてを捨ててもいい。だけど、彼女が不幸になるなら俺は…」


情熱的な告白だ。
ここで自分が幸せにするとは言わないのはジルバルトの良さでもあるが、弱点でもある。

「自分の手で幸せにするぐらい言えないのか」

「姉上とは違うんです。俺は…オリヴィアが欲しい。でも一番の願いが彼女の幸せなんです」


狂おしいほど求めても、愛する人が幸せになって欲しい。
これもまた愛だろう。


だが、ジルベルトよ。

お前はもう少し周りの気配に気づくべきだ。


「殿下、後ろをご覧ください」

「何だ…」

ガボットが憐れみの視線を向け後ろを向くように言うと、放心するオリヴィアがいた。


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