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第一章.婚約破棄騒動

26.目覚め

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もし、私自身を見てくれたら。
代用品ではなく私自身を好きと言ってくれる人がいたら。



幼い私は愛されたかった。

誰かに認められたかった。


でも、現実は難しくて。


そんな私に祖母は言ってくれた。


『どんなに蔑まれても泣いているだけじゃダメよ。ちゃんと戦いなさい』

体の弱い人だった。
病弱で、一日をベッドの上で過ごすような人だったけど、強い人で。


『リビィアを見てくれる人が現れるわ…だから負けてはダメ』


何時か本当の意味で私を愛してくれる人が現れる。
だから泣き名入りをしないで背筋を伸ばして戦う様にと言ってくれた祖母。


だから私は頑張った。


でも、婚約者にすら置き去りされた私は。


誰が愛してくれるのだろうか?


誰も私を愛してくれる人なんて…


その時だった。
光が差し込み、頬に優しい風が当たる。

風が一つの方向に向かって吹き、こっちにおいでと言われているようだった。





「うっ…」


心地よい風だった。


ふと目を覚ますと見知らぬ場所だった。



「お姉様!」

「え?ベアトリス?」


意識が朦朧とする中驚いた表情のベアトリスがいた。


「気づいたか!」

「え…」


何故か目の前には王女殿下が。


「はっ!」

「動くんじゃない。重症を負っているんだぞ」

無理矢理起きようとするも体が言う事を聞かなかった。


「おっ…お嬢様ぁぁぁ!」

「クローネ?」


「ああ、目覚められてよろしゅうございました。クローネは…クローネは!」


号泣するクローネを慰めようにも体が自由に動かなかった。


ふと、私はどれだけ意識を失っていたんだろうか?


「あの、姉達は?」

「…あの二人なら邸よ。ここはアレキサンドロス王女殿下の別邸よ」

「は?」


王女殿下の別邸?

じゃあここは、エレクトロ宮?
王族が所持する宮殿の一つであり、王女殿下の住まいに使われている宮。


「ひっ…」


「だから動くと体に障ると言っているでしょ?大丈夫よ」

「大丈夫じゃないわ」


エレクトロ宮と言えば、許可なき者は入ること許されない。
例え大臣でも簡単に出入りを許されておらず、私のよう爵位の無い者が留まるなんて許されない。


「おや、私の邸は不満だったか?」

「滅相もございません!」

不満だなんてとんでもない。
恐れ多くて、言葉を放つこともできない。


「お姉様は二週間眠っていたのよ」

「はい?」

そんなに眠っていたの!
じゃあ、姉とブライトンは無事だったのかしら?



「申し訳ありません。王女殿下に置かれましては、このような姿で」

「良い、貴女に責任はない。だが、しばらく静養してくれ」

「しかし…」


ここまで迷惑をかけるわけにも行かない。


「私もしばらく休みで暇でね、相手になってくれるか?私には弟しかおらず、友人もおとんど男でね。できたら女性と話してみたかったんだ」

「はっ…はい」

「では決まりだな。伯爵家にはちゃんと連絡を入れてあるから心配ない…おい、愚弟!何時まで隠れている!」


部屋の外に誰かいるのかしら?
しかも愚弟とは随分な言い方のように思えた。



「オリヴィア嬢」

「ジルベルト様?」


申し訳なさそうな表情で現れたのはジルベルト様だった。

普段とはどことなく雰囲気が違う様な気がした。



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