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第一章.婚約破棄騒動
25.結界の先
しおりを挟む一足早く早馬で俺達は別荘に向かっていた。
王宮とは異なり正方形の形をした質素な邸であるが、住みやすく以後事が良い邸だった。
王宮は広く、家族水入らずで過ごす時間は離宮と別邸ぐらいだった。
離宮や別邸では許された者しか出入りできない仕組みになっているので侍女や護衛騎士も選ばれた者だけだった。
道中は安全の為に質素だが、頑丈な場所を用意した。
護衛も一般騎士ではなく近衛騎士の中でも腕の立つ者を選んだ。
何もないとは思うが、安全を考えてだ。
「到着が遅いな」
「ああ、予定の時間を一時間も過ぎている」
近くに到着したら合図を送るように告げてるはずだ。
「近くまで迎えに行ってみるか」
「姉上、何を企んでいるんです」
「なぁに、未来の義妹を拝見しに行く…」
その時だった。
魔力が弾けるような感覚に襲われた。
「これは」
「近くで魔力が暴走している…しかし妙だ」
「ああ、魔力が暴走ているののだが」
暴走した魔力を誰かが抑え込んでいるような感じだった。
「これは結界か…」
「精霊が暴走しては、土地が傷つく。それを防いでいるな」
「誰だ。こんな高等魔法を使うのは。攻撃魔法なんかよりもずっと希少価値が高いぞ」
我が国では攻撃魔法を持つ者こそ、特別視されている。
しかし、それは一部に過ぎない。
何故なら守りが弱ければ意味がないのだから。
国土に結界を敷くことこそ最大の攻撃だった。
「とにかく原因を突き止める為にも急ごう」
「はい!」
俺達は急いで早馬で現場に向かった先では悲惨な状況が広がっていた。
「なっ…これは!」
その現場に向かうと、土砂崩れが起っていただけでなく。
ホワイトタイガーの群れと対峙する近衛騎士に目を疑う中、一人光に包まれながらホワイトタイガーに祈りを捧げる少女がいた。
「これは…」
「巫女の結界」
土砂崩れや、崩れた地面には結界が敷かれている。
肉眼で捕らえることはのは難しいが、魔力が高いものには見える。
結界が土砂崩れを止め、尚且つ暴走す精霊の動きを抑えていた。
「ホワイトタイガーが大人しくなっていく」
「これは…」
彼等から戦う意思は感じられない。
むしろ、敬意を持っているかのようだった。
だが、一番大きなホワイトタイガーの側には…
「オリヴィア!!!」
血だらけでぐったりとする愛しい人が見えた。
「なんてことを!すぐに治癒を!」
「火傷に、切り傷…この魔法は」
急いでオリヴィアに治癒を施す姉上は顔を顰めた。
「どういうことだ?ホワイトタイガーはこちらからしかけなければ暴走しない…しかもこの魔法は」
「アリアナとあの男がいない。どういうことだ」
何故二人はいない?
そしてオリヴィアが一人放り出されている?
簡単な方程式だった。
二人はオリヴィアを囮にして逃げたということだ。
「腐ってる…このような!」
「最低だな」
姉上と兄上は家族への愛情が強い故に許せないようだ。
「殿下!」
「ハービー!」
負傷して傷だらけのハービーは利き腕を抑えていた。
彼は御者として同行させていたはずなのに、どうなっているんだ。
「申し訳ありません!私がいながら」
「事情は後で聞く、それよりも彼女を!」
「はい!」
結界が敷かれているおかげで被害は最小限に抑えられている。
土砂崩れも治まるだろうし、死亡者は出ていないのが救いであるが…
こんな事態になるなんて。
もっと気を配ればよかった。
いや、旅行に誘わなければ良かった。
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