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第一章.婚約破棄騒動
10.辺境伯爵令嬢との出会い
しおりを挟む本が好きだった。
前世を思い出す頃からずっと。
物語を読むと主人公になったようでわくわくした。
歴史も好きだったことからジャンルを問わず呼んでいた。
「あら、錬金術…素敵」
魔法書だけでなく錬金術の法則が書かれており、私は熟読してしまった。
「魔法は才能、錬金術は努力。なんて素敵なのかしら」
魔力は貴族しか持っていないことから、錬金術を極めるのは平民が多い。
未だに魔法絶対主義な貴族は低俗という声もあるけど、魔法は魔力がなくてはいけないし、無限ではない。
だからこそ錬金術は必要だと思った。
「これあからは魔法ではなく錬金術が必要だわ」
本を読みながら改めて思う。
貴族が率先して錬金術の必要性を国民に教えたくてはと思った時。
「その通りですわ!」
「ひぃ!」
背後から声が聞こえる。
「我が国は魔法に頼り過ぎです。これから資源を増やし、尚且つ魔法に頼り切った生活を見直すべきなのです」
「あっ…あの」
「知恵は身を助けるのです。財等、使ってしまえばなくなりますが…知恵は違いますわ」
なんともぶっ飛んだ御令嬢と思いきや、他の御令嬢とは異なったドレス。
すごくシックでありながらかっこいい装いに、長身の令嬢は片手に辞典を持っている。
「以前から王立図書館にて、専門書を読み解いていると伺いました」
「あっ…いいえ」
「素晴らしいですわ。王都にも教養のお持ちの方がいらしたのですね!財の自慢や着飾るだけの馬鹿令嬢ばかりでうんざりしてましたの」
「あっ…あの」
「さぁ、私の部屋に参りましょう!領地から持って来た本がございますのよ…この図書館は私の父が寄付したのですわ」
「えっ…ちょっと!」
二度ある事は三度ある。
またもや私は拉致されてしまったのが、その方が我が国では賢者とも名高い子孫で、生ける知識人とも名高い御令嬢だと聞く。
しかもご実家の領地は一時期震災で大変なことになり、苦労されているとか。
「一度貴女とお話がしたかったのです」
「こっ‥光栄です」
同じ伯爵とは言え立場が違う。
だって辺境伯爵は国内でも重要な領地を任された貴族で、中でも何代にわたり国境を守護する役目を担っていた。
シャリエール家は伯爵家で資産家でもあるけど、国を守る重要な役割を持っているわけじゃない。
その点で考えれば辺境伯爵の方々は重要な役目を担い、国王陛下にお目見えすることが許される立場だった。
「恐れ多くも、貴重なお時間をくださり、誠にありがとうございます」
「私も楽しゅうございましたわ」
楽しかった。
でも、少し疲れてしまったかもしれない。
やっぱり寄り道しないで帰ろう。
そう思っていたのだが…
前方からふわりと何かが飛んできた。
思わず私はそれを手に取ってしまったのだが、帽子と一緒に余計なものまで掴んでしまった。
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