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第一章.婚約破棄騒動

3.前世と現世の私

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華麗なる一族の中で私だけが普通じゃないと思ったのは幼少の頃。

その日、私は高熱を出して部屋で一人だった。


「まったく、こんな日に熱を出すなんて」

「体調管理もできないなんて、好き放題させたか」


普段からほったらかしにされていた私。
その日は私のお世話をしてくれていた侍女が里帰りをしていた所為もあって無理をして勉強をしていた。

あの頃の私はひたすら努力をすればいいとばかり思っていたのだけど。


でも…


「どうしてこの子はダメなの子なのかしら」

「マリアナもベアトリスも完璧なのに」


私を心配するわけでもない。
ただ冷たい声だけをかけられることに絶望した。


――私は要らない子だったの?


――そうか、だからお母様は怒るのね?
生れてこなければ良かったの?



心が痛くて痛くて仕方なかった。


その時に私の頭に走馬灯のように駆け巡る記憶。


そこで私は前世を思い出した。


前世での私はとっても普通だった。
平凡であるけど幸せだったんだと思う。

優しい祖父母に優しい両親と兄や弟に囲まれていた。


だからなのか。


解ってしまった。
今自分が置かれている状況は幸福ではないと言う事を。

でも、決して不幸ではないのかもしれない。

貴族令嬢とし最優先にされるのは長男、長女だし。

それに前世の頃から見た目が美し人は誰からも愛される。

それは仕方ない事だった。


前世の記憶を取り戻し、少しづつ落ち着きを取り戻すようになってから自分の立ち位置を把握するようになり、妥協を覚えた。


そして何より、完璧を望む母は華麗なる一族の中で不完全な私を愛していないわけではない。

ただ完璧でないことを受け入れられなかった。

無理をして身の丈に合わない身分の人と結婚したからなのかもしれない。

必死だったんだろうと思った。

誰からも理想とされる完璧な家族。

それは砂の城のように思えてならなかったけど、何も知らなかった私はただ愛されたかった。

姉と同じように見て欲しいとは言わない。

でも、少しで良いから。

振り返る程度をして欲しいと思ったけど。

叶う事はなかった。

決定だとなるのは私の魔力が極端に少なく、栄えある一族の中で落ちこぼれの烙印を押されてしまった事で私は姉の代用品ですらないのだと気づいた。


美しい容姿と才能に素晴らしい魔力。
どれも持っていない私はシャリエール三姉妹の恥さらしとされた。


だから私は、裏方に徹底した。
どの道、両親の関心は全て姉に向けられていた。

後は妹にだけど。


ベアトリスがどう思っているのかは私には解らない。

けれど私が良い子でいれば両親は満足していた。

我儘も一切言わないいい子だと。
親のいう事を何でも聞くいい子だと思っていたようだけど。


私は期待するのを辞めただけ。

何を言っても無駄だ。
私が何かやりたいと言っても否定されるなら言わない方が良いと判断しただけ。


なのに両親も姉も気づきもない。
彼等からすれば私は素直でいい子なのだけど才能がなく出来損ないで可哀想な子と思われていた。


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