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第一章.婚約破棄騒動
2.心の支え
しおりを挟む私の家族は決して仲が険悪ではない。
少なくとも両親と妹は仲睦まじく完璧な家族だと思っている。
なんせ大恋愛の果てに結ばれた恋で、幼少期は真実の愛で結ばれたと言っていた。
でも、真実の愛とは聞こえがいいけど。
互いの婚約者を裏切ったことになるのでは?と幼いながらにして思っていた。
けれど、社交界であまり叩かれなかったのは、優秀な娘が二人。
しかも片方は第一王子の婚約者だから悪く言うのはご法度だったからなのかもしれない。
ただし、その所為で祖父と父の関係は良好とは言えない。
何故なら二人は祖父の許しなく勝手に婚約破棄をしてしまったので、当時は大変だったらしい。
だからなのか、現役を退きながらも祖父の発言力は絶対だった。
祖父が来たときは空気がピリピリしていたけど、私は祖父が大好きだった。
「やぁリヴィア」
「お祖父様!」
家では居場所が無かった私を祖父は可愛がってくれた。
祖父は厳格な人であるけど、平等に孫を可愛がる良識のある人だった。
祖母は早くに他界して今は田舎で暮らしているけど、月に一度は尋ねて私に構ってくれた。
「お祖父様、いらしてたの?」
「ベアトリス、また大きくなったな」
「ひと月でそんなに大きくなりませんわよ」
「そうか?」
私達を座らせながら、楽しいお話をしてくれた。
この時だけは幸せだった。
「ベアトリスよ。また、魔法師団の魔術師を泣かせたらしいな」
「勝手に泣いたのですわ。男の癖に軟弱だこと」
「うむ…少しばかり元気が良すぎるの」
貴族令嬢としては色々問題ありだけど、既に宮廷魔導士になる事が決まっているベアトリスを咎めることはない。
特に王族から気に入られることは両親からしてみれば喜ばしいのだけど。
「それで、マリアナは?」
「何時ものようにお父様とお母様と一緒に舞踏会よ?私は体調が悪いって断ったけど…お姉様は置いてきぼり」
「ベアトリス」
クッキーを食べながら言うベアトリスに苦笑する。
「こないだなんてお姉様の誕生日をすっぽかして、マリアナ姉様のドレスの新調をしていたわ。一番最低なのはブライト様じゃない?婚約者をほったらかしにして姉とショッピングだもんね?」
「ベアトリス。仕方ないでしょう…見た手には男性も必要だし‥護衛の代わりなのだから」
「お姉様、そんな調子じゃ将来愛人を何名も囲まれるわよ?既に浮気されているのに」
ベアトリスは少しばかり言葉がキツイ。
貴族令嬢でありながら女男爵として振る舞う為には弱腰ではいられないからこそなのかもしれないけど。
「場を弁えなさい。聞かれたらどうするの」
「大丈夫よ、ポンコツは都合のいい事だけをシフトチェンジだもの」
「ベアトリス…」
天才肌故にベアトリスは周りと合わせるのが難しかった。
幼少期は強大な魔力故に病弱で、私は看病していたこともあるので私の前では素を出す。
嫌われてはいないと思いたい。
正直姉のマリアナには苦手意識がある。
同じく美しく優秀でありながらもベアトリスを慕っているのは過ごした時間が長いからなのかもしれない。
当時、ベアトリスが病気になった頃。
姉の婚約が決まり、両親は使用人と私に任せきり。
時々心配して見に来るけど。
私からすればどうなの?って思うこともあった。
まぁ、言っても無駄だろうけど。
「お姉様、あんな男と一緒になっても幸せになれないわよ?」
相手は将来貴方の兄になる人なのにこの言い草。
本当に自由で羨ましい限りだわ。
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