上 下
3 / 137
第一章.婚約破棄騒動

2.心の支え

しおりを挟む



私の家族は決して仲が険悪ではない。
少なくとも両親と妹は仲睦まじく完璧な家族だと思っている。

なんせ大恋愛の果てに結ばれた恋で、幼少期は真実の愛で結ばれたと言っていた。


でも、真実の愛とは聞こえがいいけど。
互いの婚約者を裏切ったことになるのでは?と幼いながらにして思っていた。

けれど、社交界であまり叩かれなかったのは、優秀な娘が二人。
しかも片方は第一王子の婚約者だから悪く言うのはご法度だったからなのかもしれない。

ただし、その所為で祖父と父の関係は良好とは言えない。
何故なら二人は祖父の許しなく勝手に婚約破棄をしてしまったので、当時は大変だったらしい。


だからなのか、現役を退きながらも祖父の発言力は絶対だった。

祖父が来たときは空気がピリピリしていたけど、私は祖父が大好きだった。


「やぁリヴィア」

「お祖父様!」


家では居場所が無かった私を祖父は可愛がってくれた。

祖父は厳格な人であるけど、平等に孫を可愛がる良識のある人だった。

祖母は早くに他界して今は田舎で暮らしているけど、月に一度は尋ねて私に構ってくれた。


「お祖父様、いらしてたの?」

「ベアトリス、また大きくなったな」

「ひと月でそんなに大きくなりませんわよ」

「そうか?」

私達を座らせながら、楽しいお話をしてくれた。

この時だけは幸せだった。


「ベアトリスよ。また、魔法師団の魔術師を泣かせたらしいな」

「勝手に泣いたのですわ。男の癖に軟弱だこと」

「うむ…少しばかり元気が良すぎるの」


貴族令嬢としては色々問題ありだけど、既に宮廷魔導士になる事が決まっているベアトリスを咎めることはない。


特に王族から気に入られることは両親からしてみれば喜ばしいのだけど。



「それで、マリアナは?」

「何時ものようにお父様とお母様と一緒に舞踏会よ?私は体調が悪いって断ったけど…お姉様は置いてきぼり」

「ベアトリス」


クッキーを食べながら言うベアトリスに苦笑する。


「こないだなんてお姉様の誕生日をすっぽかして、マリアナ姉様のドレスの新調をしていたわ。一番最低なのはブライト様じゃない?婚約者をほったらかしにして姉とショッピングだもんね?」

「ベアトリス。仕方ないでしょう…見た手には男性も必要だし‥護衛の代わりなのだから」

「お姉様、そんな調子じゃ将来愛人を何名も囲まれるわよ?既に浮気されているのに」



ベアトリスは少しばかり言葉がキツイ。
貴族令嬢でありながら女男爵として振る舞う為には弱腰ではいられないからこそなのかもしれないけど。


「場を弁えなさい。聞かれたらどうするの」

「大丈夫よ、ポンコツは都合のいい事だけをシフトチェンジだもの」

「ベアトリス…」


天才肌故にベアトリスは周りと合わせるのが難しかった。
幼少期は強大な魔力故に病弱で、私は看病していたこともあるので私の前では素を出す。


嫌われてはいないと思いたい。


正直姉のマリアナには苦手意識がある。
同じく美しく優秀でありながらもベアトリスを慕っているのは過ごした時間が長いからなのかもしれない。

当時、ベアトリスが病気になった頃。
姉の婚約が決まり、両親は使用人と私に任せきり。

時々心配して見に来るけど。

私からすればどうなの?って思うこともあった。


まぁ、言っても無駄だろうけど。


「お姉様、あんな男と一緒になっても幸せになれないわよ?」


相手は将来貴方の兄になる人なのにこの言い草。


本当に自由で羨ましい限りだわ。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された公爵令嬢は本当はその王国にとってなくてはならない存在でしたけど、もう遅いです

神崎 ルナ
恋愛
ロザンナ・ブリオッシュ公爵令嬢は美形揃いの公爵家の中でも比較的地味な部類に入る。茶色の髪にこげ茶の瞳はおとなしめな外見に拍車をかけて見えた。そのせいか、婚約者のこのトレント王国の王太子クルクスル殿下には最初から塩対応されていた。 そんな折り、王太子に近付く女性がいるという。 アリサ・タンザイト子爵令嬢は、貴族令嬢とは思えないほどその親しみやすさで王太子の心を捕らえてしまったようなのだ。 仲がよさげな二人の様子を見たロザンナは少しばかり不安を感じたが。 (まさか、ね) だが、その不安は的中し、ロザンナは王太子に婚約破棄を告げられてしまう。 ――実は、婚約破棄され追放された地味な令嬢はとても重要な役目をになっていたのに。 (※誤字報告ありがとうございます)

【完結】愛されなかった私が幸せになるまで 〜旦那様には大切な幼馴染がいる〜

高瀬船
恋愛
2年前に婚約し、婚姻式を終えた夜。 フィファナはドキドキと逸る鼓動を落ち着かせるため、夫婦の寝室で夫を待っていた。 湯上りで温まった体が夜の冷たい空気に冷えて来た頃やってきた夫、ヨードはベッドにぽつりと所在なさげに座り、待っていたフィファナを嫌悪感の籠った瞳で一瞥し呆れたように「まだ起きていたのか」と吐き捨てた。 夫婦になるつもりはないと冷たく告げて寝室を去っていくヨードの後ろ姿を見ながら、フィファナは悲しげに唇を噛み締めたのだった。

お言葉を返すようですが、私それ程暇人ではありませんので

結城芙由奈 
恋愛
<あなた方を相手にするだけ、時間の無駄です> 【私に濡れ衣を着せるなんて、皆さん本当に暇人ですね】 今日も私は許婚に身に覚えの無い嫌がらせを彼の幼馴染に働いたと言われて叱責される。そして彼の腕の中には怯えたふりをする彼女の姿。しかも2人を取り巻く人々までもがこぞって私を悪者よばわりしてくる有様。私がいつどこで嫌がらせを?あなた方が思う程、私暇人ではありませんけど?

【完結】復讐の館〜私はあなたを待っています〜

リオール
ホラー
愛しています愛しています 私はあなたを愛しています 恨みます呪います憎みます 私は あなたを 許さない

貴方にとって、私は2番目だった。ただ、それだけの話。

天災
恋愛
 ただ、それだけの話。

異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~

水無月 静琉
ファンタジー
神様のミスによって命を落とし、転生した茅野巧。様々なスキルを授かり異世界に送られると、そこは魔物が蠢く危険な森の中だった。タクミはその森で双子と思しき幼い男女の子供を発見し、アレン、エレナと名づけて保護する。格闘術で魔物を楽々倒す二人に驚きながらも、街に辿り着いたタクミは生計を立てるために冒険者ギルドに登録。アレンとエレナの成長を見守りながらの、のんびり冒険者生活がスタート! ***この度アルファポリス様から書籍化しました! 詳しくは近況ボードにて!

【完結】結婚式当日、婚約者と姉に裏切られて惨めに捨てられた花嫁ですが

Rohdea
恋愛
結婚式の当日、花婿となる人は式には来ませんでした─── 伯爵家の次女のセアラは、結婚式を控えて幸せな気持ちで過ごしていた。 しかし結婚式当日、夫になるはずの婚約者マイルズは式には現れず、 さらに同時にセアラの二歳年上の姉、シビルも行方知れずに。 どうやら、二人は駆け落ちをしたらしい。 そんな婚約者と姉の二人に裏切られ惨めに捨てられたセアラの前に現れたのは、 シビルの婚約者で、冷酷だの薄情だのと聞かされていた侯爵令息ジョエル。 身勝手に消えた姉の代わりとして、 セアラはジョエルと新たに婚約を結ぶことになってしまう。 そして一方、駆け落ちしたというマイルズとシビル。 二人の思惑は───……

本物の恋、見つけましたⅡ ~今の私は地味だけど素敵な彼に夢中です~

日之影ソラ
恋愛
本物の恋を見つけたエミリアは、ゆっくり時間をかけユートと心を通わていく。 そうして念願が叶い、ユートと相思相愛になることが出来た。 ユートからプロポーズされ浮かれるエミリアだったが、二人にはまだまだ超えなくてはならない壁がたくさんある。 身分の違い、生きてきた環境の違い、価値観の違い。 様々な違いを抱えながら、一歩ずつ幸せに向かって前進していく。 何があっても関係ありません! 私とユートの恋は本物だってことを証明してみせます! 『本物の恋、見つけました』の続編です。 二章から読んでも楽しめるようになっています。

処理中です...