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第二章
3ルカリオの恋②
しおりを挟む内に秘めたる恋心はとても苦しく、カモフラージュに遊び人の振りをしていた。
「彼女を愛している。だが僕じゃ無理だ。せめて幸せになってくれれば良かった」
「だったら自分ですればよいでしょう」
「僕は精々伯爵、良くて侯爵の爵位を得るのが限度だ!」
どうしてこうも貴族社会とは歪んでいるのだろうか。
「地位があってもあんな屑男の傍で牢獄で生活する彼女がどうなるか解りませんの?社交界では淫らな娼婦だと言われ、最悪の場合毒殺されてしまうか、一生飼い殺しですわ!」
「そんな…」
「貴方頭いい癖に馬鹿ではありませんの?馬鹿でしょ!」
「赤点ばっかり取っている人に言われたくない!」
仕方ないでしょ?
私は典型的なお馬鹿なんだからこれでも努力しているんだから。
「一生面影を追って生きる?ハッ、馬鹿じゃないの?」
「くっ…」
「それとも貴方の思いなんてその程度って事なのかしら」
私は当初の目的を忘れて言いたいことを言った。
だってこのままだとアンネローゼ様は不幸になるのは確実だわ。
「私が殿方だったらあの下衆男に決闘を申し込みましたのに」
「物事は順序があるんですよ」
「順序の為に愛する人を不幸にすると?」
「僕だってできるならそうしたいさ!でも、本当の意味で彼女を救うにはお金も地位もいるんだ!愛しているからこそ我慢しないといけない。僕は彼女が幸福になれるなら地位なんて要らない貴族だって辞める覚悟もある」
本当は熱い男であるのにずっと隠さなくてはならなかった。
そうする事で自分を保って来たのだろうけど。
「だったらやりなさい!」
「彼女が兄を愛しているのにできるか!彼女の事が死ぬほど好きだからこそ!」
死ぬほど好き。
それだけ強い思いがあるなら死ぬ気で頑張れば良いのを。
何処まで馬鹿なのかしら?
諦めないで最後まで足搔き続ければよいのに。
「二人共、盛り上がっている所悪いけど水を差していいかな?」
「殿下?」
「え…」
言い合う私達の間に現れたのはルクシオン様だった。
「いらしたんですか」
「うん、僕だけじゃないんだけどね?」
苦笑するルクシオン様の視線の先には。
もうこの場を去ったかと思えたアンネローゼ様が真っ赤になってこちらを見ていたのだった。
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