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序章
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しおりを挟む明らかに嫌がる美少女に迫る外道。
動けなくなっている男を踏みつけながら見下ろす。
「嫌がる女性に迫るなんて殿方のする事ではなくてよ」
「ぐっ…私を誰だと」
「痴漢以外の何が?」
震えている美少女を庇いながら私は男を睨みつける。
これこそ悪役令嬢よね?
悪役令嬢たるものこそ高圧的に男を踏みつける。
うん悪女らしく。
「くだらない男です事?最近の宮廷貴族は女性への接し方も知りませんの?」
「なっ…」
これこそ悪女よ。
扇を片手にこれでもかと見下すような視線で。
「顔もたいしたことが無ければ振る舞いはそれ以下ですわね」
「無礼な」
「あら?無礼な振る舞いをした方に言われたくありませんわ?それともそちらのご令嬢に迫って関係を強要しているのかしら?本当に見苦しいですわ…風紀が乱れますわ」
「何だと!」
睨んでいるわね。
そうよ、ここで私がこの男を怒らせて私が悪女である事を皆に知らしめればいいわ。
完璧な淑女になれないならばせめて噂だけでも流しておこう。
「もう一度言って差し上げるわ。身の程を弁えなさい!」
扇を突きさしながら告げるが。
「ふっ…ふざけるなぁぁぁ!」
「え!」
「お嬢様!」
まずい。
やり過ぎた。
逆ギレした男は私に迫って来た。
「そこまでだよ」
「へ?」
殴りかかって来るかと思えば男はそのまま地面に叩きつけられた。
「女性に手を上げるとは論外だよ」
「ルクシオン様!」
体格が違うのに腕を捻り上げて床に叩きつける力が何処にあるんだろうか。
「僕の婚約者に暴行を働くとはどいう事かな?」
「こっ…婚約者」
私の存在ってあまり知られてなかったのか?
まだ社交界デビューもしていないからなのか、それとも地味だからか?
「えっ…嘘でしょ?」
「あの猿令嬢」
「婚約は白紙になったんじゃ」
「いや死んだんじゃ」
既に死んだことにされている!
私の存在って何?
悪役令嬢のポジションなのに何でここまで底辺?
神様は私に何のスキルもくれないのか。
「そんなこんなのが…」
「未来の王妃に向かって無礼な。不敬罪となるが…」
「申し訳ありません」
あれ?
笑っているのに目が笑っていない。
微笑みの王子が氷の王子様になっているんだけど。
気のせいかな?
絶対気のせいだよね?
ゲーム上では微笑みの王子様と呼ばれたのだから。
うん、私の見間違いだな。
「レティシア様…申し訳ありません」
「え?」
「私の所為で危ない目に合わせてしまって」
泣きそうな表情をする美少女を見てハッとする。
攻略対象の相手役。
ヒロインのライバルキャラの一人だった。
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