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第一章

2こうなった経緯

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日本でもなく外国というには文明の発展が遅いと思われる国。

何故ならここは沙良が生まれた世界と異なる異世界だった。


国名を、シネンシア王国。


中世ヨーロッパを思わせる国で、王都の方は賑わいを見せながらも深刻な問題を抱えていた。


年々増加する増税に、不治の病と。
表向きは平和に見えても国の外では戦争の繰り返し。

国内でも争いは絶えず、領地の奪い合いも少なくない。

ここ、シネンシア王国も同様だった。


そして異世界人である沙良がこの国に来てしまったのはただの事故。

事故と片付けているのは迷惑な真似をした連中が責任逃れをするために使った言い回しであるが、この世界には天からの使いが現れる。


人々は天の使いを聖女と呼んだ。
人為的な力と神の言葉に従い、人々を導き国を守る救世主のような存在だった。

伝説のように語り継がれるも、聖女の存在によりこの国は守られて来た。
しかし、聖女が現れる時期は誰にも解らず、予測することも不可能だったのだが、国の上層部は聖女召喚という儀式を試みた。


しかし、聖女召喚とは簡単に上手く行くはずもなく。
異世界の空間を歪めてしまった結果、国の結界が揺らいでしまった。

そんな中、巻き込まれたのが沙良だった。

沙良はその日、仕事を終えて地元の神社を通り家に帰る予定だったが。


その神社付近に空間が歪み、運悪く巻き込まれてしまったらしい。

しかし、その事情を知った神官達は沙良んことなど気にも留めず、試運転は成功したなどと放置したのだ。

流石にイラっとしたので早々に国を出ようと思ったのだが、事情を聞いたリシュベール侯爵夫妻が沙良を邸に招いてくれた。


二人は子供がおらず、寂しい日々を送っていた。
そんな中国の勝手な事情に巻き込まれ知らない世界に放り出された沙良を放ってはおけず手を差し伸べた。

沙良は理不尽な真似をした連中に嫌悪感を抱くも、親切にしてくれた侯爵家に対しては恩を感じ、病弱なリシュベール夫人に献身的な看病を行い、時には元気づける内に二人の間に絆が芽生えた。


病気により社交界からも親族からも疎遠になっていたレオノーラにとって夫と使用人ぐらいだった。
外に出ることもなく、食も細いレオノーラは歩くこともできないと言われていた。

しかし、沙良はあらゆる手を使ってレオノーラの残存機能を使いリハビリを行い、食事改善や薬の確認を行った結果。

歩くこともできず、余命あとわずかと言われた病気を治したのだった。

病により精神的に止んでいたレオノーラは明るさを取り戻し、今では元気になったのだが、その噂を聞きつけた元老院の一人、クリスチャン・アーノルドが現れたのだった。

彼は沙良の噂を聞き、公爵家の邸に呼びつけ娘の診て欲しいと言われた。
実績も爵位もない沙良が周りから受け入れられるはずもなく、周りの医療班は沙良を見下し、絶対手術不可能な患者を押し付けた。


その患者が戦争で負傷した騎士達だった。
彼等は平民で、貴族出身の医師達はまともに見る気はなく、療養施設に放り込むだけだった。

下手に治療して死なせては責任を問われるのだが、そこにちょうどいい生贄が現れた。

しかし、従事看護師としての実績を持つ沙良は負傷した騎士達の命を救った事でクリスチャンから評価されることになったのだが。

それが災難の始まりだった。
それ以降クリスチャンから無理難題を押し付けられ、あげくの果ては我儘爺と呼ばれるクリスチャンのクレーム処理係になっていた。


何かにつけて呼びつけ、クリスチャンの相手をさせられ。
文句を言いたいが、聖女召喚をした連中から権力争いにならないように保護してもらっている以上は無下にできなかった。


しかも、クリスチャンはギルバートの父親とも旧知の仲故に従わざる得なかったのだ。



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