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序章
4経緯
しおりを挟む弁護士の碓井さん曰く。
遺産相続に関してはおじいちゃんはずっと考えていたそうだ。
今住んでいる家族の土地はおじいちゃんのものだった。
建物自体もおじいちゃんの援助があったからこそらしく、節税対策として安く建てることができた。
しかし父さんは名義変更はしていなかった。
おじいちゃんは万一俺が遺産相続の権利があれば二人は握りつぶすと考えたのだろう。
「そこで万一千景さんが亡くなった時に保険をかけました。この家を千早君が相続できなければ土地を手放す。そうなれば…」
「父があの土地を買うと?」
「ええ、買えば3億はしますしね?」
そんなに価値があったんだ。
「それから君に相続された土地ですが」
「えっと…もう一つの?」
「はい」
今住んでいる家とは別にもう一つ家がある。
武家屋敷のように古く、この家よりも年季がある。
土地だけは広いんだけど買い手がつかないのはいわくつきなのと、近くに小学校があるので空き地にしても土地の価格が安いのだけど。
「あと三か月で土地の価値は値上がりします」
「はい?」
「もうすぐそこの地区の小学校が廃校になります。図書館もね?」
「えーっと」
つまりどういうことだろう?
「土地は高値で売買されるように千景さんは計算していました。君が暮らしていくには不自由しないように…勿論この家だってかなりの価値がありますよ」
「でも!さっきは…」
「ええ、処分するのにはかなりの金額になります。ですが、この家にある美術品は相当珍しいんです」
まさか演技をしたの?
でも、弁護士として罪になるんじゃないかな?
「私は土地だけの利益はあまりないといいました。家全体の利益とは言ってません」
それっていいのかな?
屁理屈というんじゃないだろうか?
「ですが、これだけの家を売るのは惜しいでしょう」
「売りません」
この家はおじいちゃんとおばあちゃんの大事な家だ。
古くてもリフォームは俺一人でできる。
おじいちゃんに教わったし。
「そう言ってくれると思いましたよ」
「碓井さん、何も失いましたけど。この家がある…だからまだ生きていけると思います」
おじいちゃん、ありがとう。
家族に捨てられたけど、俺はここで生きていく。
おじいちゃんが大切にしていたこの家で。
「千早君、君は幸せになっていいんだよ。いや、ならないとだめだ」
「碓井さん?」
「絶対にならないとだめなんだ」
俺の肩を強く使い見ながら思いつめた表情をする碓井さんが何を思っているのか俺は解らないでいた。
その夜、書類の手続きを終えた後に買い物を終えた俺は家路に向かった。
そこで俺は一つの出会いを果たしたのだ。
「止めてください!いやぁ!」
「お嬢様!」
不良に絡まれている一人の美少女との出会いだった。
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