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序章
1プロローグ
しおりを挟む俺、相馬千早は両親の元ではなく祖父の家で暮らしている。
名義は祖父ではなく俺なのだけど。
理由は両親から縁を切られたからだ。
物心ついたころから俺はいないものとして扱われた。
それだけならまだよかった。
母は美しい容姿で高校生の時は読者モデルだった。
自慢だったそうだ。
父も優秀でアメリカに留学しており大変優秀だった。
その所為か、長男である俺が優秀ではない。
無能だったことを憎み、息子として認めなかった。
近しい友人には俺を紹介したくなかったようだ。
育児はほぼ放置で、祖父母が代わりに育ててくれた。
うち孫で初孫ということもあり大変可愛がってくれた。
でも、祖父母は高齢で、俺が十歳の頃に祖母は病死したのだ。
その五年後、最愛の祖父も病気で亡くなった。
最後は自宅療養を願い、両親はお金がかかるという理由で面倒は俺に丸投げした。
「長男なんだから当然でしょ?」
「治療費はアンタが稼ぎなさい。どうせ高校にはいかせないし」
「無駄金を使ってやったんだ。ついでにお前もクソ親父と死ねばいいんだ」
「きゃはは!マジ受けるわ。早く死んでよねクソ兄貴」
家族そろってこのざまだ。
まだおじいちゃんは生きているのにそんな言い方。
「病人の前で大きな声をださないでくれ」
「何よその口は!」
普段なら俺は口答えはしない。
でも大好きなおじいちゃんをクソ爺呼ばわりをされて我慢できなかった。
「何よその目」
「もうすぐお医者さんが来るんだけど」
「本当に不気味ね!」
「もういい。目障りだ…醜い生き物など視界に入れたくない」
そう言い残し、両親は去っていく。
けれど…
「本当に不気味んんだよ」
「やめっ…」
去り際に弟は大事に飾られているお祖母ちゃんの写真を踏みつけて行った。
「おばあちゃん!」
急いで写真盾を手に取るも皹ができている。
「ごめん…おばあちゃん」
守ってあげられなかった。
「ごめんねおじいちゃん。大事な写真」
「ちは…や」
「おじいちゃん?」
眠っていたおじいちゃんが目を覚ます。
「泣くんじゃない」
「泣いてないよ」
「すまんな」
昔は大きかった手。
今ではもう小さくなっている。
「お前を一人残して逝くのが心残りだ。あいつらがこの先どうするか」
「おじいちゃんはそんんこと気にしなくていいんだよ。それにまだ早いよ」
おじいちゃんは聡明な人だった。
自分の死期を理解しているんだろう。
だけどまだ諦めて欲しくなかった。
「じいちゃんはな…お前は劣っていると思ったことはない」
「こんな時まで俺の事を心配しなくていいんだよ」
優し過ぎるおじいちゃん。
家族全員が俺を馬鹿にしてもおじいちゃんとおばあちゃんだけは…
「おじいちゃん、伊達巻を焼いたんだ。好きでしょ」
「千早…」
別れの時は近づいている。
何故か解るんだ。
だから時間を大切にした。
その半年後、おじいちゃんは眠るように亡くなった。
悲しむ時間も与えられないまま両親は残酷な一言を。
「葬儀は身内でするわ。お金がかかるし、アンタが出しなさい千早」
「こんな無駄な金を使う必要はない」
「すそう、マジで無駄じゃん」
「このまま燃やせばよくない?」
何所までも無情だった。
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