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第四章
19.ハント子爵
しおりを挟む裁判が完全に終わったと同時に貴族派の過激派達も力を失った。
その一番の理由が、ジョバンナの廃妃だ。
彼女は貴族派でもあったので、陰で皇妃の座を狙い、シシィー様を追い落とす計画を立てていた事も浮き彫りになった。
後ろ盾てあるハント侯爵家は降格となり、ほとんどの領地を奪われている。
挙句の果て、実家は没落してしまったのだから。
彼女を助けてくれる人はいない。
それはガーナも同じで、彼女と手を切る者はいても手助けしようとする人間は誰一人いなかったとか。
ガーナの夫であるハント子爵も同じだった。
私も幼少期は数える程しか会った事はなく、二人の間に夫婦としての絆はなかったとのこと。
ガーナの命令で仕方なく結婚した。
帝都から離れる前に最後に一度だけ目通りをすることがあった。
「この度は、誠に申し訳ない事を」
「ハント子爵…」
彼にも問題はあるかもしれない。
かと言って彼だけを責めることはできなかった。
彼は望まぬ結婚を強いられ、孤独だったと聞かされた。
当時はジョバンナも権力があったので、抵抗もできずにいたのだろう。
「謝って許される事ではありません。そしてこのような事を申し上げるのは無礼と存じますが」
「許します」
私は何を言われても動じない。
ここまで来て、何を言われても怖くない。
「こうなるべくしてこうなったと思っております。あれは公爵家の姑になどなれぬ器。そして息子も同様に」
「ハント子爵…」
「例え婚約が続行されても、縁は断ち切られると思っておりました」
まるでこうなった事を安堵しているような目だった。
「私は爵位を完全に返上しようと思っておりますが、陛下の情け故に男爵を与えられました」
「え…」
「貴族として残りの人生を償え、それが陛下の、命令です」
ある意味、平民になるよりも辛いことかもしれない。
元は侯爵であったのに、子爵に降格して、最終は男爵だなんて。
「ハント家の罪を背負い、一生かけて背負いながら生きて参ります」
愛は無くとも妻のしでかしたことの責任は取るつもりでいるんだ。
「どうしてです。そこまで責任感があったのなら…何故」
私はハント子爵と言葉を交わしたのは数えられるだけ。
ここまで責任感が強く情があったのに、どうしてガーナと向き合わなかったのか。
「私はハント家ではないに等しい立場です。ジョバンナやガーナの都合のいい道具でしかない。私は過去に愛した恋した恋人の影を追う余り、ガーナと向き合わなかった」
「それは…」
「ガーナも私など形だけの夫しか思っておりませんでした。それでいいと思ったんです」
愛のない結婚であっても共に手を取り合えって生きて行こうと思った時期もあったが、それは最初だけ。
ガーナの真意を知ってからは、そんな気さえ起き亡くなった事を聞かされてしまった。
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