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第三章
13.不審な影~ディーノside
しおりを挟む厄介な事になったな。
次の試合が、エイミールとローレンツだなんて。
貴族達からすればこれ以上無い肴だな。
先日の舞踏会で失態を犯してはいるものの、主に騒ぎを起こしたのシャロン令嬢だ。
まぁ、エイミールも失言をしたが、侯爵の子息がそこまで厳しく咎められることはないかった。
世間体の噂が痛いぐらいだろうが…
「しかしどういう神経をしているんだ」
あんなことがあったのに参加しようと思うなんて随分と図々しいな。
俺だったらしばらくは公の場に出られないけど。
「はぁー…」
このまま何事もなく済めばいいが。
「ん?」
競技場に戻ろうとした俺は一人、コソコソとした怪しい人影を見た。
「何だ?」
競技場とは反対に、そこは騎士団が管理している従魔の小屋だった。
今日のイベントの後にパレードが行われる予定で、テイマーと竜騎士もそのパレードに参加する予定だった。
「あそこは決められた人間以外、入れないのに」
俺は嫌な予感がした。
コソコソ入って行くのはそうだが、微かに禍々しいオーラ―を感じたのだ。
「これで…本当に?」
「ええ」
遠すぎて良く聞こえななかった俺は魔力を発動した。
俺の属性は風だ。
風とはとても便利で風の妖精を呼び出し彼等の声を聞いてもらうことにした。
「ディーノ、また苛められたのかなのよ?」
「違うから」
風の妖精で見た目は愛らしい子キツネだった。
「僕を呼んだって事は、また皇女に追いかけまわされたのよ」
語尾になのよをつける妖精に俺が頭が痛かった。
「少し、探りを入れて欲しいんんだ」
「ついに犯罪に手をそめたのよ?何?盗撮?盗聴?ストーキング?」
泣いていい?
俺は一応皇族なのに妖精にまでこの仕打ち。
「とにかく盗み聞きすればいいのよ?」
「言い方を…もういいや」
「お耳でかくするのよ」
風の妖精、イナリは耳を大きくして会話を聞かせてくれた。
風の魔力を使い、声が俺にも直接聞こえるようにしてくれていたのだ。
『これで本当に上手く行くの?』
『ああ』
『ヘマをしたら許さないわよ』
男と女の声が聞こえた。
しかし女の声は、聞き覚えがあった。
(この声――)
『しかし、アンタ等も相当な悪だな…貴族のお姫様』
『私は悪くないわ…あの女にそれ相応の報いを受けさせるのよ。アリアに復讐を』
はっきりと聞こえた声。
(シャロン嬢!)
女の方はシャロン嬢だった。
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