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第二章
30.悪意ではない声
しおりを挟む今夜のパーティーは高位貴族から下級貴族まで招待されるも、ほとんどがその家の長男長女かその代理がほとんどだと聞かされている。
派閥に関係なく、その家の代表たる人が参加しているのだ。
その中には身内もいるけど、何故シャロンが参加しているのだろうか?
通常ならば代表以外で参加するのは婚約者か妻だ。
パートナーの同席も認められているけど、私達は正式に婚約解消の手続きは終わっていないはずだ。
これではまるで――。
「手間が省けたな…なるほど。こういう事か」
「え?」
「君が婚約解消をしなくてもあちらからしてくれるとはね?」
それは、この場でシャロンを紹介すると言う意味なのかしら?
「見て、こんな場所にまで」
「どういうつもりかしら?」
「本当に…」
聞こえないようにヒソヒソ囁く声は私の耳にも入って来る。
もしかして私の事をと思ったが、違った。
「あの方って噂の方よね」
「ええ、例のロマンス小説さながらだとか言われていた…非常識きな方でしょ」
「物語と現実は違いますのよ?婚約者がいながら他の女性と恋愛関係になるなんて非常識だわ」
「それを言うなら略奪した令嬢もはしたないですわ」
現在噂話をしているご夫人は年配の方で、夫人会の幹部の方でもある。
領主代行をしている方達でもある。
私も面識は数回程度だけど。
彼女達は中立的な立場を貫き、どの派閥に属していないと聞く。
「以前のパーティーでも皇族の皆様に無礼を働いたとか…公の場で大声を上げるなんてどんな教育をされているのかしら」
「本当に…病弱だからと言ってあれはありませんわね」
「それを言うならばハント侯爵の子息もどうなのかしら?最近は遊び歩いていると聞きましてよ…貴族の品位を落としかねませんわね」
深いため息を付きながら二人を見る表情は呆れ顔だった。
二人をどうこうする気はないし、悪意があるように見えない。
今までは若い年齢の人達が二人を噂をしていたのあるのかもしれない。
「大丈夫だ…ここには派閥に関係ない公平な目で見てくださるご夫人が多い」
「ローレンツ?」
「君を批難するだけの人間はいない。だから目を開いて、ちゃんと耳を傾けて」
社交界には敵しかないなかった。
だから、今でも無意識に足がすくんでしまっている。
でも、視点を変えれば?
そうよ、私には味方になってくださる方がいる。
「今の貴女は完全装備をしてますのよ?完璧な鎧に味方もいましてよ?堂々となさい」
「いや、戦いに行くわけじゃないんだろ!」
「何を言ってますの?今から害虫駆除をしますのよ?万全の態勢で臨まなくてはなりませんわ」
こういう時、ローレンツとシシィー様が兄妹であることが良くわかる。
なんだか心に余裕ができて来た私は踏み出せる気がした。
そう、今から戦場に向かうつもりで行かなくては。
ここで怯んではいけないわ。
そう思っている矢先、二人と視線が合った。
ならば私は――。
彼等と対峙すしなくてはいけない。
もう前までの私ではないのだから。
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