上 下
11 / 13
第一章

閑話1王家の悩み

しおりを挟む




話しは今から数日前の事。


「またダメか」

「頭が痛いですね」


本日で何度目になるか解らない舞踏会は不発に終わった。


「シリウス様の婚約者を選ばなくては…隣国でも問題になっています」


側近であり幼馴染でもあるレオナルドは主であり親友であるシリウスの身を案じていた。


「正式な婚約者を選ぶにしても慣れていただかくては」

「消去法で、殿下の事を存じない令嬢を選びましたが…顔合わせの前でアウトです」


王太子殿下と言う事を伏せて舞踏会に参加して紹介をしてもらう事にしたが。


「彼女は社交界で生きて行けないでしょうね」

「美しい娘でありますが、美しいだけで生きていける程甘くない」

「他の令嬢に嫌がらせをされてドボンですからね」


副団長のアレンディス以外に別の誰かの声が聞こえる。

そこには。


「母上!」

「難航しているようね」


お茶の用意をするレオナルドの母カトレアもため息をつく。


「殿下の体質と女性への苦手意識はどうにもデリケートな問題だわ」

「それを治さないといけません」

「無理強いをしてもねぇ…」

後の国王となるシリウスが女性が苦手とあれば妻を娶る事も、子を作る事もできない。


「早急にお相手を見つけるよりも殿下の体質を改善してくれる女性を雇った方がいいのではなくて?」

「母上、それは無理です」

「誠心誠意を持って仕えてくださり、尚且つ仮初の婚約者をしてくれる女性なんて」


一時でも婚約者になれば後から面倒な事になるのは明白だった。


「これまで殿下に近づいた女性がどんな人間だったか」

「だから身分を隠して交流をと思ったのでしょう?まぁ不発だったけど」

「ミンフェ令嬢は論外です。それに辺境地でも様々な噂があります」


当初白羽の矢が立ったのは、似たような体質を持つ女性をと考えた。
上手く行けば婚約者にとも期待をしたが初っ端から王太子殿下が相手と言えば問題が起きるので王族と言う事にしたのだが…。


変装したシリウスを見る目でアウトだった。
黒髪はどの国でも珍しく、他国では不吉だと言われている。

華やかな金髪等が好まれるので早々に態度に見せるラリシアは交流を拒否し、遠回しに趣味の話をしてもシリウスの趣味も馬鹿にされたのだ。


本人は気にしていなかったが――。


「絶対無理です」

「あんな令嬢が一時でも殿下の隣など」


彼等が望む婚約者は美しいだけの令嬢ではない。
むしろ容姿等二の次で最優先するのシリウスの助けになってくれる女性だった。


「せめて殿下が真面に目を合わせられる女性であれば…」

「後は忍耐力が強い方が望ましい」


過去に女性関係で心に傷を負ったシリウスには貴族令嬢よりも辺境地で貴族らしくない令嬢の方が合っている気がしたのだ。


しかしそう都合よく行くわけもなく。


「やはり側近を女装させるか」


がくりと項垂れるレオナルドだったが。


「大変です団長!」

「何だ?騒々しいぞシン」


近衛騎士の一人で一番の最年少のシンが乱暴に扉を開けて現れた。



「殿下が女性と笑っております!」

「「「何だと!」」」


これがすべての始りだった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

子供の言い分 大人の領分

ひおむし
恋愛
第二王子は、苛立っていた。身分を超えて絆を結んだ、元平民の子爵令嬢を苛む悪辣な婚約者に。気持ちを同じくする宰相子息、騎士団長子息は、ともに正義の鉄槌をくださんと立ち上がろうーーーとしたら、何故か即効で生徒指導室に放り込まれた。 「はーい、全員揃ってるかなー」 王道婚約破棄VSダウナー系教師。 いつも学園モノの婚約破棄見るたびに『いや教師何やってんの、学校なのに』と思っていた作者の鬱憤をつめた作品です。

お父様お母様、お久しぶりです。あの時わたしを捨ててくださりありがとうございます

柚木ゆず
恋愛
 ヤニックお父様、ジネットお母様。お久しぶりです。  わたしはアヴァザール伯爵家の長女エマとして生まれ、6歳のころ貴方がたによって隣国に捨てられてしまいましたよね?  当時のわたしにとってお二人は大事な家族で、だからとても辛かった。寂しくて悲しくて、捨てられたわたしは絶望のどん底に落ちていました。  でも。  今は、捨てられてよかったと思っています。  だって、その出来事によってわたしは――。大切な人達と出会い、大好きな人と出逢うことができたのですから。

悪妃の愛娘

りーさん
恋愛
 私の名前はリリー。五歳のかわいい盛りの王女である。私は、前世の記憶を持っていて、父子家庭で育ったからか、母親には特別な思いがあった。  その心残りからか、転生を果たした私は、母親の王妃にそれはもう可愛がられている。  そんなある日、そんな母が父である国王に怒鳴られていて、泣いているのを見たときに、私は誓った。私がお母さまを幸せにして見せると!  いろいろ調べてみると、母親が悪妃と呼ばれていたり、腹違いの弟妹がひどい扱いを受けていたりと、お城は問題だらけ!  こうなったら、私が全部解決してみせるといろいろやっていたら、なんでか父親に構われだした。  あんたなんてどうでもいいからほっといてくれ!

婚約解消? 私、王女なんですけど良いのですか?

マルローネ
恋愛
ファリス・カリストロは王女殿下であり、西方地方を管理する公爵家の子息と婚約していた。 しかし、公爵令息は隣国の幼馴染と結婚する為に、王女との婚約解消を申し出たのだ。 ファリスは悲しんだが、隣国との関係強化は重要だということで、認められた。 しかし、元婚約者の公爵令息は隣国の幼馴染に騙されており……。 関係強化どころか自国に被害を出しかねない公爵令息は王家に助けを求めるも、逆に制裁を下されることになる。 ファリスについても、他国の幼馴染王子と再会し、関係性を強化していく。皮肉なことに公爵令息とは違って幸せを掴んでいくのだった。

いつまでも甘くないから

朝山みどり
恋愛
エリザベスは王宮で働く文官だ。ある日侯爵位を持つ上司から甥を紹介される。 結婚を前提として紹介であることは明白だった。 しかし、指輪を注文しようと街を歩いている時に友人と出会った。お茶を一緒に誘う友人、自慢しちゃえと思い了承したエリザベス。 この日から彼の様子が変わった。真相に気づいたエリザベスは穏やかに微笑んで二人を祝福する。 目を輝かせて喜んだ二人だったが、エリザベスの次の言葉を聞いた時・・・・

お母様が国王陛下に見染められて再婚することになったら、美麗だけど残念な義兄の王太子殿下に婚姻を迫られました!

奏音 美都
恋愛
 まだ夜の冷気が残る早朝、焼かれたパンを店に並べていると、いつもは慌ただしく動き回っている母さんが、私の後ろに立っていた。 「エリー、実は……国王陛下に見染められて、婚姻を交わすことになったんだけど、貴女も王宮に入ってくれるかしら?」  国王陛下に見染められて……って。国王陛下が母さんを好きになって、求婚したってこと!? え、で……私も王宮にって、王室の一員になれってこと!?  国王陛下に挨拶に伺うと、そこには美しい顔立ちの王太子殿下がいた。 「エリー、どうか僕と結婚してくれ! 君こそ、僕の妻に相応しい!」  え……私、貴方の妹になるんですけど?  どこから突っ込んでいいのか分かんない。

冷遇された王妃は自由を望む

空橋彩
恋愛
父を亡くした幼き王子クランに頼まれて王妃として召し上げられたオーラリア。 流行病と戦い、王に、国民に尽くしてきた。 異世界から現れた聖女のおかげで流行病は終息に向かい、王宮に戻ってきてみれば、納得していない者たちから軽んじられ、冷遇された。 夫であるクランは表情があまり変わらず、女性に対してもあまり興味を示さなかった。厳しい所もあり、臣下からは『氷の貴公子』と呼ばれているほどに冷たいところがあった。 そんな彼が聖女を大切にしているようで、オーラリアの待遇がどんどん悪くなっていった。 自分の人生よりも、クランを優先していたオーラリアはある日気づいてしまった。 [もう、彼に私は必要ないんだ]と 数人の信頼できる仲間たちと協力しあい、『離婚』して、自分の人生を取り戻そうとするお話。 貴族設定、病気の治療設定など出てきますが全てフィクションです。私の世界ではこうなのだな、という方向でお楽しみいただけたらと思います。

元王妃は時間をさかのぼったため、今度は愛してもらえる様に、(殿下は論外)頑張るらしい。

あはははは
恋愛
本日わたくし、ユリア アーベントロートは、処刑されるそうです。 願わくは、来世は愛されて生きてみたいですね。 王妃になるために生まれ、王妃になるための血を吐くような教育にも耐えた、ユリアの真意はなんであっただろう。 わあああぁ  人々の歓声が上がる。そして王は言った。 「皆の者、悪女 ユリア アーベントロートは、処刑された!」 誰も知らない。知っていても誰も理解しない。しようとしない。彼女、ユリアの最後の言葉を。 「わたくしはただ、愛されたかっただけなのです。愛されたいと、思うことは、罪なのですか?愛されているのを見て、うらやましいと思うことは、いけないのですか?」 彼女が求めていたのは、権力でも地位でもなかった。彼女が本当に欲しかったのは、愛だった。

処理中です...