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第一章
閑話1王家の悩み
しおりを挟む話しは今から数日前の事。
「またダメか」
「頭が痛いですね」
本日で何度目になるか解らない舞踏会は不発に終わった。
「シリウス様の婚約者を選ばなくては…隣国でも問題になっています」
側近であり幼馴染でもあるレオナルドは主であり親友であるシリウスの身を案じていた。
「正式な婚約者を選ぶにしても慣れていただかくては」
「消去法で、殿下の事を存じない令嬢を選びましたが…顔合わせの前でアウトです」
王太子殿下と言う事を伏せて舞踏会に参加して紹介をしてもらう事にしたが。
「彼女は社交界で生きて行けないでしょうね」
「美しい娘でありますが、美しいだけで生きていける程甘くない」
「他の令嬢に嫌がらせをされてドボンですからね」
副団長のアレンディス以外に別の誰かの声が聞こえる。
そこには。
「母上!」
「難航しているようね」
お茶の用意をするレオナルドの母カトレアもため息をつく。
「殿下の体質と女性への苦手意識はどうにもデリケートな問題だわ」
「それを治さないといけません」
「無理強いをしてもねぇ…」
後の国王となるシリウスが女性が苦手とあれば妻を娶る事も、子を作る事もできない。
「早急にお相手を見つけるよりも殿下の体質を改善してくれる女性を雇った方がいいのではなくて?」
「母上、それは無理です」
「誠心誠意を持って仕えてくださり、尚且つ仮初の婚約者をしてくれる女性なんて」
一時でも婚約者になれば後から面倒な事になるのは明白だった。
「これまで殿下に近づいた女性がどんな人間だったか」
「だから身分を隠して交流をと思ったのでしょう?まぁ不発だったけど」
「ミンフェ令嬢は論外です。それに辺境地でも様々な噂があります」
当初白羽の矢が立ったのは、似たような体質を持つ女性をと考えた。
上手く行けば婚約者にとも期待をしたが初っ端から王太子殿下が相手と言えば問題が起きるので王族と言う事にしたのだが…。
変装したシリウスを見る目でアウトだった。
黒髪はどの国でも珍しく、他国では不吉だと言われている。
華やかな金髪等が好まれるので早々に態度に見せるラリシアは交流を拒否し、遠回しに趣味の話をしてもシリウスの趣味も馬鹿にされたのだ。
本人は気にしていなかったが――。
「絶対無理です」
「あんな令嬢が一時でも殿下の隣など」
彼等が望む婚約者は美しいだけの令嬢ではない。
むしろ容姿等二の次で最優先するのシリウスの助けになってくれる女性だった。
「せめて殿下が真面に目を合わせられる女性であれば…」
「後は忍耐力が強い方が望ましい」
過去に女性関係で心に傷を負ったシリウスには貴族令嬢よりも辺境地で貴族らしくない令嬢の方が合っている気がしたのだ。
しかしそう都合よく行くわけもなく。
「やはり側近を女装させるか」
がくりと項垂れるレオナルドだったが。
「大変です団長!」
「何だ?騒々しいぞシン」
近衛騎士の一人で一番の最年少のシンが乱暴に扉を開けて現れた。
「殿下が女性と笑っております!」
「「「何だと!」」」
これがすべての始りだった。
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