王太子殿下の仮初の婚約者になりましたが何故か愛されてしまいました。

ユウ

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第一章

7憧れの地へ

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辺境地に住まう私達は王都では田舎者。
住む世界が違うのだけど、そんな王都に住まい身分が非常に高く離宮に住まう方とはどんな身分の方なのだろうか。



辺境地まで迎えに来てくださったのはとても素敵な方だった。


「お初にお目にかかりますアリアドネ様。私はレオナルド・ソルフェーシュと申します」

「遠路はるばるお越しくださり申し訳ありません」

「おや…これこれは」


私は何か悪い事を言ったかしら?


「ソルフェージュ様?」

「どうか、レオナルドとお呼びくださいませ」

「はっ…はぁ」


自分と親し気に接してくださる方のようだ。
だけど近衛騎士、しかも制服を見る限り団長さんと来た。

そんな方がお迎えに来てくださるなんてどんな高位な方なのかしら?


「いえ、噂に聞いていた面白い姫君と伺っていましたのね」

「面白い?つまらないではなく?」

「いいえ、そのような噂は…この度は無理なお願いを聞き入れてくださり感謝しております。どうぞ」


手を差し出され馬車に乗ると、その傍に控えている方がアンナの手を引く。


「どうぞ」

「申し訳ありません」


普段ならば私の所為でアンナは軽んじられるのに一人の令嬢として扱ってくださるなんて、なんて優しい方なのかしら!


「まぁ、なんて見事な刺繍なのかしら」

「お嬢様…」

「はっ!」


つい悪い癖が出てしまった。


「お褒めに預かり光栄です。アリアドネ様は素晴らしい機織り姫だと伺っております。目利きの才能も素晴らしい」

「えっ…」


もしかして褒められたのかしら?
今までは馬鹿にされていた異名だったのだけど。


「そんな…お恥ずかしい」

「可愛らしい方だ」

「団長、これ以上は無礼ですぞ」


間に割って入るのは副団長の方だった。


「これ以上の無礼は許されませんよ。場合によっては」

「待て待て。剣を抜くんじゃない」

「ならば行動を改めください」


かなり気真面目な人のようだ。
レオナルド様は私の緊張を解そうとしてくれているだけなのに。


「少しばかり無礼でしたか」

「そんな…」

「申し訳ありません。義妹となる貴女が可愛らしかったので」

んん?

義妹とはどういう事だろうか?


「レオナルド様?」

「今はよろしいですが、後々はお兄様と呼んで欲しいですね。特に私の母が期待しているので」

「はい?」


これではまるで私はレオナルド様の妹になるようではないか?


私は混乱している最中、馬車は王都に到着した。


「わぁ!もう王都に…」

「通常なら三日はかかりますが、この馬車なら半日で十分です。王族専用なので」

「へ?」

「殿下がくれぐれも丁重にお迎えするようにとおおせでしたので」


殿下?


待て待て!
聞き間違いじゃないか?


「殿下とは…」

「はい我が国の唯一の王位継承者である王太子殿下です」



ああ、天国のお母様。
アリアドネは選択を間違えたのかもしれません。


まさか…


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