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70.不要な妹~イライザside

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あの後、王宮にたどり着くまでが大変だった。
馬車を他の物に変えるべきだと言われたが、今日の式典で馬車は出払っており、代わりの馬車はかなりみすぼらしく私が乗るには相応しくなかった。


だから車輪の交換をするのに時間がかかり、待ちきれないローズマリーは先に行くと駄々をこねて道端で言い合いになってしまった。


その後王宮に向かうも門は閉められており、もう時間外だからと断られるも不敬だと言って無理矢理抑え込んだわ。


本当に無礼ね。
私は帝国の帝国の女王となるのよ。

王宮に入り、侍女達が私を見て真っ青な顔色になる。
ようやく私が誰か解ったと思いきや、侍従らしき男が現れて無礼を言い放つ。


「これはどううことです」

「それが、先ほどから話が通じず」

「私はイライザ・ステンシルよ!すぐにここを通しなさい」

中性的な顔立ちの男だった。
何処かで見た事があると思ったけど、気のせいよね。


「既にゲストの方々は広間に集まられています。式典も終わっているのに…こんな時間に参加とは非常識です」

「なっ…無礼者!」

「貴様、何処の家の者だ!私は侯爵だぞ」


なんて無礼な男なのかしら!


「すぐに報告を」

「しかしロビンソン様!」

「大丈夫です」


ようやく解ったのか侍女は迎えを呼ぶべく、その場を去って行く。
残った侍従はでくの坊のように突っ立っているだけで本当に役に立たないわ。

「早く広間に通しなさい!」

「声を上げないでください、十分聞こえております。それよりもそんな恰好で広間に行く気ですか」

「何よ?」


堪えしょうがないローズマリーはこれ以上持たされるのが嫌と言わんばかりにすぐにでも広間に行くつもりだったが、侍従は足元を指摘した。


「はぁー…本当に嘆かわしい。大事な式典を何だと思っているのか。広間を汚されたくありませんので、先に靴の泥を綺麗にしてください」

「は?」

「まさか裸足で入る気ですか」


下を指さすと、ローズマリーの靴が泥で汚れている。

「まぁ、なんて姿なのローズマリー!」

「え?」

「そんなに靴を汚して見っとも無いわ。お父様、これでは…」

「うむ、そうだな。別の靴を」

お父様は直ぐに予備の靴を用意させろと侍従に行おうとするも私は妙案が思いついたわ。


「お母様、別の部屋で靴を取り返させるべよね?」

「えっ…そうね」

私のアイコンタクトに気づいたお母様は直ぐ靴を履き替えさせるように促し、侍女と共に向かわせた。



「これで問題ないはずよ」

「そう言う事では…」

「うるさいわよ!早く案内しなさい!」

「解りました」


最初から素直に従えばいいのに、余計に時間を取られてしまったわ。

侍従に案内され広間に向かう最中、私は扉に細工をした。
出られないようにお母様がドアノブに縄を結び出れらないようにして、鍵穴にも石を入れて置いた。


これで鍵を使ってもしばらくはでることができないだろう。


ローズマリーにはここで待機してもらうことにした。

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