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46.離れ
しおりを挟む王宮内の離宮は王族でも許された者以外は入ることができない。
現在離宮にいるのはその限られた人間だけだった。
「アハハ!傑作だわ!」
「本当ね!貴族派達のあの屈辱的な顔を思い出すと腹筋が壊れそうよ!ざまぁみなさい」
現在お茶会の席で王妃陛下とエラノーラ様は腹を抱えて大笑いだ。
大爆笑と言っても過言ではない。
「謁見の間からちらりとあの男が固まっているのが見えたわ」
「ええ、きっと現実が受け入れられないのでしょうね?いい気味だわ」
先ほどのやり取りを思い出しながら未だに笑っている二人に陛下も、クレイル様も困った表情をしていた。
「ああ、おかしかった」
「久しぶりに笑いましたわ」
この二人は王宮では嫁姑の関係で仲が悪いと言われているが真逆だ。
王妃陛下は国と国の結びつきを大事にする方で、革新派だったし、エラノーラ様も同じ思想を持っている。
だが王宮では二人の不仲説を流して、仲が悪いように仕向けているのだ。
早い段階に気づかれた王妃陛下はその噂を利用して貴族派を騙す事にしたのだ。
本当は親子というよりも姉妹のように仲睦まじいのだ。
「まぁ、いい香り」
「ハーブティーでございます。最近冷え込んでいるので」
「嬉しいわ。祖国のいた頃から大好きなのよ」
紅茶よりもハーブティーを好まれるエラノーラ様が一番好きなのは蜂蜜たっぷりのカモミールだった。
「このマロ―ブルーというハーブティーは神秘的ね」
「こちらはこうすると色が変わります」
「まぁ、素敵」
帝国薬草研究所ではアイリスが率先して薬草を育てている。
薬草をお茶にして飲む方が病気の予防策もあり、中には不妊女性の為に開発されたお茶だ。
「こちらのお茶は免疫力を上げ、体内を浄化する効果が御座います。そして…」
「ありがとうございます」
恐らく未だに妊娠の兆しがないエラノーラ様自身も気づいている。
「解毒効果もあります。それから帝国から女性の医師を連れて来ております」
「何から何までありがとうアイリス…」
王妃陛下は安堵した表情を浮かべる。
元から体が弱いクレイル殿下との間に中々子ができない事を悩んでいた。
周りはクレイル殿下が子ができない体だと噂を流していた。
故にエレオノーラ様は今回の同盟際に、クレイル殿下の不名誉の噂を取っ払う為も医師を派遣して欲しいと言われた。
そして、エラノーラ様は自分の体を診察して欲しいと言われたのだ。
これは見せしめでもある。
クレイル殿下が子ができにくい体なのは本当だが、エラノーラ様が他国の医師に診察を受けると言う事実を公にして守るつもりなのだろう。
全てはクレイル殿下を守る為だった。
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