26 / 101
23.姫君と魔物~カディシュside
しおりを挟むステンシル侯爵家は歪んでいる。
我が家は貴族の家柄というよりも、騎士の家柄なので家族間の仲は良い方だった。
母上は元皇女であるけど、実家でも腹違いの姉上はいるが、骨肉の争いはしていないし。
アットホームな雰囲気だった。
でも、ステンシル侯爵家は見栄と体裁だけ。
形だけ取り繕っただけの家族で、絆なんてないのだとすぐに解った。
優しく気遣える姉を演じながらも遠回しにアイリス様を蔑み見下し、妹もこれ見よがしに馬鹿にして見下す。
僕達だったらそんなことはしない。
ルカーシュ兄上とユーリ兄上はそれぞれ得意な物は違うけど、ユーリ兄上はルカーシュ兄上から一歩後ろを下がっていたし。
ルカーシュ兄上だった国井一番の聖騎士の称号を持つユーリ兄上を誇りに思っていた。
なのに!
「本当に私の妹は困った子ね」
「お労しい」
「奥ゆかしい妹君を心配されて」
これもよがしにアイリス様を心配しながら馬鹿にして。
「どうしてアイリスお姉様はああなのかしら?こないだも…」
「ローズマリー、アイリス様は控えめなだけだ」
「限度がありますわ。侯爵家として恥ずかしい行動は辞めて欲しいですわ。美貌もないのだから」
妹の方は周りにアイリス様を悪く言って楽しんでいる。
隣で婚約者が困った表情をしているのが解らないのかとも思ったが。
そんなある日。
「まずい事になったな。第二王子殿下が婚約破棄をした」
「しかも大勢の目の前というのが問題ですね」
ある日家族会議で聞かされた、第二王子殿下がイライザ嬢との婚約破棄。
元より政略結婚で王族派との絆を深める為のものだったし、ステンシル侯爵家は男子に恵まれなかったので第二王子殿下を婿に迎える予定だった。
第一王子殿下が立太子しているので、通常なら伯爵位を与えられるのだが、侯爵家に婿入りするのはかなり条件が良いと思える。
なのにだ。
「元より、二人の婚姻は反対意見が多かったが」
「ここまで軽率な行動をする方とは思えない。ステンシル侯爵家が荒れるな」
深刻な問題であるけど、僕達はステンシル侯爵家の今後の心配はしてもイライザ嬢に関してはそこまで心配していなかった。
社交界で傾国の美女として持てはやされているし。
侯爵家ならば、伯爵の次男、三男を婿に貰えばいい話だった。
だけど。
あろうことに彼等はとんでもない事をしでしかしたのだ。
「ルカーシュ兄上、社交界でおかしな噂が…嘘ですよね?ユーリ兄上があの女の婚約者にされるなんて。こんなの」
「先手を取られた。既に噂は広まっている…いや、わざと広められていると言うべきか」
一時期、邸に引きこもりがちなイライザ嬢はアイリス様に当たり散らしているのを心配したユーリ兄上が邸を連れ出し外出するようになった。
全てはアイリス様の為に。
なのに何を勘違いしたのか、ステンシル侯爵夫人は、ユーリ兄上がイライザ嬢に思いを寄せていると勘違いをしていた。
ないだろ!
ユーリ兄上が潔癖症な所があるから、ああいうタイプは一番嫌いなんだ。
なのに、騎士団を辞めて婿になれなんて横暴だ!
僕の中でステンシル侯爵家は魔そのものだと思った。
魔の巣窟に今も囚われている兄上とアイリス様が心配で仕方なかった。
27
お気に入りに追加
4,695
あなたにおすすめの小説
異国で咲く恋の花
ゆうな
恋愛
エリス・ローレン 20歳の貴族令嬢エリス・ローレンは、社交界での華々しい活躍により名声を得ていた。しかし、陰謀によって冤罪を着せられ、彼女の人生は急転直下する。家族や友人たちからも見捨てられたエリスは、無実を主張するも国外追放される。
新たな生活の舞台は、荒廃した小さな村。貴族としての誇りを失ったエリスは、これまでの経験やスキルを生かして生き抜くことを決意する。彼女の持つ医学や薬草学の知識を武器に、エリスは村人たちと交流を深め、次第に信頼を得ていく。
婚約破棄され、思わず第二王子を殴りとばしました~国外追放ですか!心から感謝いたします~
四季 葉
恋愛
男爵家の令嬢アメリアは、出世に興味のない医師の両親と幸せに暮らしていました。しかし両親を流行り病で亡くし、叔父が当主をつとめる侯爵家に引き取られます。
そこで好きでもない第二王子から一目惚れしたと言われ勝手に婚約者にされてしまい、
「アメリア、君との婚約を破棄する!運命の相手は別にいると僕は気がついたんだ」
散々自分のことを振り回しておきながら、勝手なことを抜かす第二王子に、普段はおとなしい彼女はついにキレてしまったのです。
「婚約破棄するなら、もっと早くできなかったんですか!!」
そうして身分を剥奪され国外追放となりますが、彼女にとっては願ってもない幸運だったのです。
【完結】フェリシアの誤算
伽羅
恋愛
前世の記憶を持つフェリシアはルームメイトのジェシカと細々と暮らしていた。流行り病でジェシカを亡くしたフェリシアは、彼女を探しに来た人物に彼女と間違えられたのをいい事にジェシカになりすましてついて行くが、なんと彼女は公爵家の孫だった。
正体を明かして迷惑料としてお金をせびろうと考えていたフェリシアだったが、それを言い出す事も出来ないままズルズルと公爵家で暮らしていく事になり…。
【完結済】次こそは愛されるかもしれないと、期待した私が愚かでした。
こゆき
恋愛
リーゼッヒ王国、王太子アレン。
彼の婚約者として、清く正しく生きてきたヴィオラ・ライラック。
皆に祝福されたその婚約は、とてもとても幸せなものだった。
だが、学園にとあるご令嬢が転入してきたことにより、彼女の生活は一変してしまう。
何もしていないのに、『ヴィオラがそのご令嬢をいじめている』とみんなが言うのだ。
どれだけ違うと訴えても、誰も信じてはくれなかった。
絶望と悲しみにくれるヴィオラは、そのまま隣国の王太子──ハイル帝国の王太子、レオへと『同盟の証』という名の厄介払いとして嫁がされてしまう。
聡明な王子としてリーゼッヒ王国でも有名だったレオならば、己の無罪を信じてくれるかと期待したヴィオラだったが──……
※在り来りなご都合主義設定です
※『悪役令嬢は自分磨きに忙しい!』の合間の息抜き小説です
※つまりは行き当たりばったり
※不定期掲載な上に雰囲気小説です。ご了承ください
4/1 HOT女性向け2位に入りました。ありがとうございます!
お言葉を返すようですが、私それ程暇人ではありませんので
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
<あなた方を相手にするだけ、時間の無駄です>
【私に濡れ衣を着せるなんて、皆さん本当に暇人ですね】
今日も私は許婚に身に覚えの無い嫌がらせを彼の幼馴染に働いたと言われて叱責される。そして彼の腕の中には怯えたふりをする彼女の姿。しかも2人を取り巻く人々までもがこぞって私を悪者よばわりしてくる有様。私がいつどこで嫌がらせを?あなた方が思う程、私暇人ではありませんけど?
【完結】愛され令嬢は、死に戻りに気付かない
かまり
恋愛
公爵令嬢エレナは、婚約者の王子と聖女に嵌められて処刑され、死に戻るが、
それを夢だと思い込んだエレナは考えなしに2度目を始めてしまう。
しかし、なぜかループ前とは違うことが起きるため、エレナはやはり夢だったと確信していたが、
結局2度目も王子と聖女に嵌められる最後を迎えてしまった。
3度目の死に戻りでエレナは聖女に勝てるのか?
聖女と婚約しようとした王子の目に、涙が見えた気がしたのはなぜなのか?
そもそも、なぜ死に戻ることになったのか?
そして、エレナを助けたいと思っているのは誰なのか…
色んな謎に包まれながらも、王子と幸せになるために諦めない、
そんなエレナの逆転勝利物語。
見捨てられた逆行令嬢は幸せを掴みたい
水空 葵
恋愛
一生大切にすると、次期伯爵のオズワルド様に誓われたはずだった。
それなのに、私が懐妊してからの彼は愛人のリリア様だけを守っている。
リリア様にプレゼントをする余裕はあっても、私は食事さえ満足に食べられない。
そんな状況で弱っていた私は、出産に耐えられなくて死んだ……みたい。
でも、次に目を覚ました時。
どういうわけか結婚する前に巻き戻っていた。
二度目の人生。
今度は苦しんで死にたくないから、オズワルド様との婚約は解消することに決めた。それと、彼には私の苦しみをプレゼントすることにしました。
一度婚約破棄したら良縁なんて望めないから、一人で生きていくことに決めているから、醜聞なんて気にしない。
そう決めて行動したせいで良くない噂が流れたのに、どうして次期侯爵様からの縁談が届いたのでしょうか?
※カクヨム様と小説家になろう様でも連載中・連載予定です。
7/23 女性向けHOTランキング1位になりました。ありがとうございますm(__)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる