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プロローグ
しおりを挟む豪華なシャンデリアに美しく着飾られた花。
広間には男女が腕を組みダンスを踊りながら、今宵の宴に浮足を立たせていた。
その中心にいるの俺、ユーリ・ウィンディア。
辺境伯爵次男でもあり、隣国の皇族の血筋を持つ家柄だった。
その隣にいるのはステンシル侯爵令嬢の長女イライザ。
傾国の美女と謡われ、数多の男を虜にしていると言われる程の妖艶な美しさを持つと人気だった。
誰もがお祝いの言葉を述べる中、俺の視線は別の方を見ている。
「いやぁ、本当にめでたい」
「本当ですわ。おめでとうございますイライザお姉様。美男美女でお似合いよ」
「ありがとうローズマリー」
ステンシル侯爵とその娘のご令嬢の三女、ローズマリーがお祝いの言葉を送る。
「それにどう考えてもあの人とユーリ様じゃ不釣り合いよ。完璧だわ」
嬉しそうにはしゃぎながら話すローズマリーだったが、ステンシル侯爵が咎める。
「これ、大きな声で言うんじゃない。アイリスに聞こえるだろ」
「別に良いじゃない。聞こえたって怒ったりしないし…侯爵家の跡継ぎのイライザお姉様の婚約が決まったのよ?喜ぶべきじゃない?役立たずの次女が初めて役に立ったんだし?」
「そこまで言ったら可哀想でしょ?」
「イライザお姉様は本当に優しいですわね!」
「ええ、本当に自慢の娘だわ!」
仲の良い家族の風景だった。
しかし、そんな幸せな家族は俺が壊す事になる。
「本日はお忙しい中、足を運びくださり誠にありがとうございます。今宵は皆様にご報告が御座います」
招待客に俺は挨拶の言葉を述べる。
誰もが俺に集中する中、じっと前を見つめた。
「私、ユーリ・ウィンディアはイライザ・ステンシルとの婚約を解消いたします!」
「は?」
「なっ…何を!」
俺の宣言に会場は騒めき、ステンシル侯爵家は唖然としていた。
立ち尽くすステンシル侯爵夫妻は言葉も出なかった中、真っ先に声を上げたのはイライザだった。
「何を言ってますの!」
「元より、俺はアイリス嬢の婚約者でした。ですが長女の婚約が破談になったが為でした。イライザ嬢には気の毒と思っておりましたが、私が彼女の新たな婚約者と噂が流れてしまいました」
「えっ…は?」
訳が分からないと言う表情をするイライザだが、俺は気にすることなく話を進めた。
俺の気持ちは変わらない。
全てを失うことになるかもしれないが、それでもこの思いは誰にも止められない。
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