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第五章.栄光と堕落は紙一重
9.とある少女の前世③
しおりを挟む結婚式は最悪だった。
でも、最悪なのはその後だった。
私は、その後直ぐに働いているお店を解雇された。
私が勤めているのは都内でも人気のサロンで私は美容部員をしていた。
「君の進めた化粧品で肌が荒れたクレームが来たんだよ」
「私の所為じゃなくてお客様の所為じゃないですか」
「確かに君の言うことも一理ある。だが君はお客様の肌の事を貶したそうだな…」
ため息をつくチーフに私は苛立つ。
あの客が綺麗にしたいって言うからしてあげたんじゃない。
ブスが化粧しても変わらないし。
「お客様は肌にアレルギーを持ちだったんだ…それを事前にアンケートにも記入し置ておいたはずだ!なのに何故無視をした!お客様はあの後病院に運び込まれて死にかけたんだぞ!」
「でも!」
「でも、もあるか!君は謝罪の言葉も申し訳ないと言う気もないのか…君には美容部員は向いていない。解雇だ!」
「こんなのパワハラだわ!訴えてやる!」
こんな一方的な会社、こっちから願い下げだと思った。
でも、訴えは却下され、あげくの果て、あの客から訴えられる始末になった。
「何てことをしてくれたんだ!」
「え?」
「君が粗相をした先方さんは俺の取引先のお得意さんだったんだぞ!おかげで商談はなくなった!ただでさえ、会社が危ないのに…」
「そんな大げさじゃない?」
「何が大袈裟なのか!これでまた借金が増えた」
借金?
どいういうことよ!
「結婚式の費用の800万の返済はローンだ」
「何で!」
「当然だろう!本来なら御祝儀を頼りにしていたんだ。それが全部なくなり。結婚式で君が馬鹿なことを叫んだ所為で噂が流れた…おかげで俺が立ち上げた会社の評判はがた落ちだ」
「でも、それぐらいで…」
蓄えはいっぱいあったんじゃないの?
だって、婚約中はあんなにお金を持っていたじゃない?
「君は馬鹿か?そんなにポンポンお金が稼げるわけがないだろう?経済の風向きはコロコロ変わる。数十万の金ならどうということはないが、何百万とくれば別だ」
「じゃあ…どうなるのよ!私達の新婚生活は」
「ハッ?借金を返済する為に、アパートに引っ越すしかないに決まっているだろう?」
「嫌よ!そんな貧乏くさい所なんて!これじゃあ、アンタと結婚した意味ないわ。優と結婚した方がましじゃない…」
「何だと貴様!」
その後私達は掴み合いの喧嘩をした。
最初は怒鳴り合いに罵り合いだったけど、ヒートアップしてあの男は私に手を上げて来た。
信じられない。
私に手を上げるなんて最低よ。
少なくとも彼は私に怒鳴り声を上げることはしなかった。
お説教をしても絶対に手を上げなかったのに、こいつは私の顔を殴った。
そして、私達は優雅な新婚生活が一気に貧乏な生活となり。
新しい事業をしようとしても失敗続きで株も手放し貧しい生活を強いられた。
あげくの果て、あの男は会社の秘書と浮気をしては、香水の匂いをつけて帰って来るようになり、私達の夫婦生活は冷めきってしまっていた。
けれど、義母と義父の元には行きたくなかった。
家に引きこもって暗い表情をして、近づくのも嫌だし。
しかも、近所では私を蔑むような目で見て来たので耐えがたかった。
「こんなのありえない…!」
幸せになるはずだった。
優雅に暮らすはずだった私は現実を受け止められないでいたある日、コンビニで買った雑誌の見開きに彼の記事が載っているのを見つけた。
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「嘘…」
特集にはイケメンハーバリストとして紹介され、隣にはあの不愛想でガラの悪いあの男が映っている。
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あの男が医者だった訳?
しかも、都内でも有名な病院の御曹司だったなんてありえない!!
でも…そうよ。
私に相応しくなる為に頑張ったのよね?
なら、許してあげる。
結婚してあげるわ!
笑みを浮かべて私の本当の王子様の元に向かった。
きっと、まだ私に未練があるはずだから泣いて喜ぶに違いないわ!
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