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第四章.ダンジョン攻略大作戦

9.傷だらけの聖獣

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急いで湖近づくと負傷した鹿が倒れていた。

「酷い…これは呪いだ」

魔獣を拘束する為に使われる魔道具が足につけられている。

さらに酷いのは、首輪に針が仕込まれている。


「可哀想に…もがき苦しみながら逃げて来たのか」


聖獣や神獣に並ぶ魔獣は希少価値が高く、契約するのは難しい。

特に知能が高い魔獣と契約するのは至難の業だからなのか、一部では力でねじ伏せ無理矢理契約して従魔にする冒険家が続出していた。


「今取ってあげるから…うっ!」

首輪に触れると電撃が流れる。

「アン!」

「離れてろ!」

かなり強い魔力で、俺の手も火傷を負う。

でも、止めるわけには行かない。
もし、このまま放置したらこの鹿は死んでしまう。

万一生き永らえたとしても飼い殺しにされる。


そんなのあんまりだ。

(俺に魔力があったら!)

こんな時、自分の無力が憎らしい。
攻撃魔法も治癒魔法も使えない俺は、この子の傷を一瞬で治してやることすらできない。

できるのはこの魔道具を外してやることだけだ。


「くそぉぉぉ!」

バチバチ!!

「キュー!!」

「がんばれ!負けるな」

苦しみもがく鹿は魔道具の負の力に苦しめられていた。


黒い霧が鹿を苦しめ、拘束しようとする。


――何でこんなことをするんだ!

俺の中で怒りが爆発する。


「ふだけるな!この子に手出しはさせない!」

無力で何もできない俺は持っている薬を握りながら睨みつける。

「スキル発動!」


今俺にできることは一つ。


「お前の攻撃を俺が受けてやる!」

普段使うことが無いスキル。

それは戦闘時に置いて、味方が受ける攻撃を俺が受けるものだった。

ある意味捨て身のスキルだが…今の俺に出来るのはこれだけだ。


「アンアン!」

「タマ!お前の力でこの子を守るんだ!俺の言うことを聞け」

「アン!」


この子をこれ以上傷つけたくない。


例えどうなってでも守って見せる!!


俺は打たれ強いんだから、耐えて見せる。



「うぉぉぉぉぉ!!」

スキルを発動し、真っ黒な雷撃が直撃しようとした時だった。



地面から強い光が放たれる。


「なっ…何だ!」

光が螺旋を描き魔法陣が浮かんだ。
まるで俺達を守るかのように光は黒い雷撃を無効かした。



『私の主よ』


え?

一瞬だけ頭に声が響いた。



「光が…」


『優しき私の主よ。貴方を待っていた』


「鹿が…」

負傷していたはず鹿が宙に浮いていた。



さっきまで虫の息だった鹿は体から炎を放出し黒い霧を燃やした。




パリーン!


何かが砕ける音がして。

それが、鹿を拘束していた魔道具だと気づくのに時間はかからなかったが…


「私の主よ」

「鹿がしゃべったぁぁぁ!」


さらに俺を驚かせたのは聖獣が人の言葉を話したことだった。


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