109 / 237
第三章.フラグ回避計画
10.無事生還
しおりを挟む前世でも途中退場したのに再び退場か。
俺の人生はどやら短いのだろうと悟りながらも不思議だった。
最初程は熱かったのに痛みを感じない。
「クゥーン」
「へ?」
あの凶暴そうな魔獣が耳を垂らしていた。
「え?ワンコ?」
「ワフ!」
凶暴な炎の精霊はワンコだった。
しかも炎が消えたことでワンコは小さくなりコーギーになっている。
「ワフ!」
「お前、俺に攻撃しなくていいの?」
「クゥーン」
首を真横に振りながら首輪を見せられ、それに触れると首輪が切れる。
バチバチ!
静電気のようなモノだった。
「これって魔道具…」
魔獣を押さえつける道具の一種で本でしか見たことがない代物だった。
「そっか、好きで従っていたんじゃないんだな」
「ワン!」
「可哀想に、毛も剥げて…俺が薬を塗ってあげるよ」
懐には俺が作ったワセリンがあるので傷口に塗布するとあら不思議。
「え?」
傷口は一瞬で消えた。
同時に――。
「エリオル!!」
「あれ?」
炎は一瞬で消えてしまった。
「エリオル様!」
「ぶっ!」
レイラが泣きながら俺に飛びつくのだが。
「怪我はないかエリオル!すまん俺の為に!」
「レントン様!何をなさいますの!」
今の状況は、俺に抱きついたレイラを無理矢理が剥がし俺に抱きつきながらボディーチェックをしている。
当然無理矢理引きはがされたレイラは怒っていた。
「怪我をしていないか確認だ。それからお前の馬鹿力で骨が折れたら大変だ」
「何ですって!私は婚約者ですわ」
「今はだろ?」
「今後も変わりませんわ」
「ハッ!」
鼻で笑うレントン様はやっぱりウィルフレッド様と血の繋がった兄弟だと思わざるを得なかった。
「とりあえずアホ共は離れろ」
「ええ…人目を気にしてください」
ここで常識人の二人がなんとか諫めてくれたおかげで助かった。
穏便に事を運ぼうと思ったが。
「これは悪意のある殺人行為ですわ」
「ああ殺人未遂であるが、解っているだろうな?」
俺の考えは甘かった。
常識人であるが、情け容赦尚ない二人ははいそうですかと済ませる訳がない。
「なっ…こいつが飛び出して来たんだ」
「ほぉ?ではレントン殿下を殺そうとしたんですね」
「ちがっ…」
「でも、貴方の指示で魔獣はレントン殿下を襲ったのは何故かしら?」
不敵に笑みを浮かべるラナリア嬢は王家に忠誠を誓っている一族でもある。
現役の女性騎士でもあるということはそういう事だ。
「もし、あの場でエリオル様がレントン殿下を庇わなければどうなっていたでしょうか?」
「下手すればマリエ様たちは不敬罪お呼びに王族を暗殺した犯罪者です」
「ちょっと待ってよ!レントン様に攻撃したのはこの二人よ…私は関係ないわ」
「マリエ?」
「何を…」
あくまで実行したのはこの二人なので自分は関係ないと言ってのけるマリエに耳を疑うも、直ぐに開き直る。
「そうだ、マリエは悪くない」
「俺達がしたことだ」
冷や汗を流しながら言っても恰好つかないな。
78
お気に入りに追加
8,329
あなたにおすすめの小説
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います
榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。
なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね?
【ご報告】
書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m
発売日等は現在調整中です。
この度、猛獣公爵の嫁になりまして~厄介払いされた令嬢は旦那様に溺愛されながら、もふもふ達と楽しくモノづくりライフを送っています~
柚木崎 史乃
ファンタジー
名門伯爵家の次女であるコーデリアは、魔力に恵まれなかったせいで双子の姉であるビクトリアと比較されて育った。
家族から疎まれ虐げられる日々に、コーデリアの心は疲弊し限界を迎えていた。
そんな時、どういうわけか縁談を持ちかけてきた貴族がいた。彼の名はジェイド。社交界では、「猛獣公爵」と呼ばれ恐れられている存在だ。
というのも、ある日を境に文字通り猛獣の姿へと変わってしまったらしいのだ。
けれど、いざ顔を合わせてみると全く怖くないどころか寧ろ優しく紳士で、その姿も動物が好きなコーデリアからすれば思わず触りたくなるほど毛並みの良い愛らしい白熊であった。
そんな彼は月に数回、人の姿に戻る。しかも、本来の姿は類まれな美青年なものだから、コーデリアはその度にたじたじになってしまう。
ジェイド曰くここ数年、公爵領では鉱山から流れてくる瘴気が原因で獣の姿になってしまう奇病が流行っているらしい。
それを知ったコーデリアは、瘴気の影響で不便な生活を強いられている領民たちのために鉱石を使って次々と便利な魔導具を発明していく。
そして、ジェイドからその才能を評価され知らず知らずのうちに溺愛されていくのであった。
一方、コーデリアを厄介払いした家族は悪事が白日のもとに晒された挙句、王家からも見放され窮地に追い込まれていくが……。
これは、虐げられていた才女が嫁ぎ先でその才能を発揮し、周囲の人々に無自覚に愛され幸せになるまでを描いた物語。
他サイトでも掲載中。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。
婚約破棄をされた悪役令嬢は、すべてを見捨てることにした
アルト
ファンタジー
今から七年前。
婚約者である王太子の都合により、ありもしない罪を着せられ、国外追放に処された一人の令嬢がいた。偽りの悪業の経歴を押し付けられ、人里に彼女の居場所はどこにもなかった。
そして彼女は、『魔の森』と呼ばれる魔窟へと足を踏み入れる。
そして現在。
『魔の森』に住まうとある女性を訪ねてとある集団が彼女の勧誘にと向かっていた。
彼らの正体は女神からの神託を受け、結成された魔王討伐パーティー。神託により指名された最後の一人の勧誘にと足を運んでいたのだが——。
【完結】聖女と結婚ですか? どうぞご自由に 〜婚約破棄後の私は魔王の溺愛を受ける〜
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
恋愛
【表紙イラスト】しょうが様(https://www.pixiv.net/users/291264)
「アゼリア・フォン・ホーヘーマイヤー、俺はお前との婚約を破棄する!」
「王太子殿下、我が家名はヘーファーマイアーですわ」
公爵令嬢アゼリアは、婚約者である王太子ヨーゼフに婚約破棄を突きつけられた。それも家名の間違い付きで。
理由は聖女エルザと結婚するためだという。人々の視線が集まる夜会でやらかした王太子に、彼女は満面の笑みで婚約関係を解消した。
王太子殿下――あなたが選んだ聖女様の意味をご存知なの? 美しいアゼリアを手放したことで、国は傾いていくが、王太子はいつ己の失態に気づけるのか。自由に羽ばたくアゼリアは、魔王の溺愛の中で幸せを掴む!
頭のゆるい王太子をぎゃふんと言わせる「ざまぁ」展開ありの、ハッピーエンド。
※2022/05/10 「HJ小説大賞2021後期『ノベルアップ+部門』」一次選考通過
※2021/08/16 「HJ小説大賞2021前期『小説家になろう』部門」一次選考通過
※2021/01/30 完結
【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる