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第三章.フラグ回避計画

閑話3.輝くもの

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傷だらけの心のまま成長したレントンは音楽だけは負けまいとして努力を続けた。
他の勉強は必要最低限にだけにして。


しかしそんなある日、家庭教師の一人に告げられた。


「殿下の音楽には輝くものがありません」

「輝くもの?」

「はい、殿下の音楽は技術だけで言えば申し分ないでしょう。ですが、ただ美しいだけでは他者を感動させることはできません。その為には演奏する者の心に輝くものを持っていなければ」


曖昧な言葉で言われてもレントンには解らない。


「輝くもの、それは愛です」

「愛?」

「人には目で見えませんが、家族に対する愛や友人に対する愛…形は様々です」


教師の言葉をレントンは理解できなかった。


「くだらない、音楽は技術だ。愛や気持ちなどあっても無意味だ」

「殿下…」

「そのくだらない愛で狂った女は王宮にどれだけいるんだ。真実の愛を誓いながらも平気で愛人を作り裏切りをするの男女…王宮の貴族がまさにそうだろ」

レントンは愛も友情も信じていなかった。
これまでレントンに近づいてきた人間は皆最後は裏切るのだから。


幼少期母の為に必死に頑張って来た。
けれど酷い裏切りを受けて以来、心を壊してしまった。


――愛など虚しいだけだ。


愛情など欲しがらなければ母は壊れなかったのかもしれない。


そう思わざるを得なかったレントンは誰にも心を開かず数年後学園に通った。


そこで新しい出会いがあった。


「ごきげんよう」

一人薔薇園を歩いていると偶然美しい少女に出会った。
王都内で自分に気軽に話しかけて来る者は少なく、無邪気に笑う少女、マリエ・ヒッチは新鮮だった。


孤独だったレントンの立場を思ってマリエは泣いてくれた。

「お辛かったのですね‥ですが、レントン様はレントン様のままでよろしいのですよ」

不思議とマリエの言葉は心に入って来て、嫌悪感を抱かなかった。
交流を重ねるうちにマリエに好意を抱くようになるも、心にひっかかったものは消えない。


あの日言われた輝くものが見つけられないでいたレントンだったが。



あの日。


初めて心を揺さぶられた出来事が起きた。



それがエリオルの奏でたピアノだった。
技術だけなら間違いおなくレントンの方が上だったが、レントンは初めて他人の演奏に感動した。


心無い演奏は誰の心にも響かない。


けれどエリオルの演奏は孤独なレントンの心に響いた。


エリオルの演奏には輝きがあった。


そしてこの日レントンは輝くものを見つけた。





これまで何もないと思っていた。
そしてこれからも心を殺して道化として生きて行くしかないと思ったレントンの心の闇に光が差した瞬間。


霧でが晴れるような気分だった。


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