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第一部.婚約破棄と新たな婚約
13.第一王子の不満
しおりを挟む馬鹿共を始末することはできた。
けれど、まだゴミを完全に排除できたわけではないので要注意が必要だった。
アルハイムは一応、罪悪感はあるようだが、一応だ。
未だに家族の情に頼る可能性もあるだろうし、騎士団から追放までには至らなかった。
あの男は何もしていないからだ。
ある意味傍観していたのも罪になるが、直接手を上げていたら騎士団から追放できたのだが。
それはそれで許せない。
当分は近辺の様子を見ながら逆恨みをされないように護衛を増やしたい所だった。
だがその必要はあまりなかった。
なんせレイラは聖騎士のスキルに加え炎の属性だった。
しかも高位精霊と契約しているから簡単に手を出すことはできないだろう。
俺は風の属性を持ち、白騎士のスキルを持っている。
剣術の腕に関してはレイラよりも俺の方が上だが魔法は炎に勝てないので五分五分だった。
ただし風の属性故に、遠くにいる者の気配を察知する能力に長けているので助かっている面もある。
以前も――
「見ろよ、アイツだろ」
「殿下の周りをウロチョロして、目障りだな」
「ちょっと遊んでやろうぜ」
成人式を終えてからというもの、エリオルの立場は一変した。
だが、面白く思わない馬鹿な奴らは地味な嫌がらせを仕組むのだが…
「水かけてやろうぜ」
「ああ、泥水をな」
手に持っているのはバケツ。
それをかけようとするも、俺が許すわけもない。
「わっ!」
風魔法で突風を出して馬鹿共の体制を崩させる。
「ぶわ!」
「何するんだ!」
泥水をひっくり返させれば、後は大変だ。
「何をしているんだ君達は」
「げっ、隊長!」
「王宮で泥遊びとは!罰として一か月間馬小屋の掃除を命じる!」
騎士団の隊長に見つかった奴らはその後馬小屋の掃除をさせられ減給処分を受けたのだった。
ざまぁ見ろ!
俺は見えない所でエリオルを苛める奴に風の魔法を使っては裁きを与えていた。
しかし、こんな俺でもままならないことがある。
それは――。
「ベルン!何をしてますの!」
「見て解らないか、お茶を飲んで読書だが」
「見れば解りますわ。私が聞きたいのはどうしてエリオル様と二人きりなんですの」
コイツだ。
レイラは別に気にする程ではない。
だが厄介な男はベルンハルトだ。
「レイラ様、私がお願いしたんです。勉強を見て欲しいと…ハルは私の我儘を聞いてくれたので」
「ハル?」
特別な愛称で呼ばせ距離も近く俺は苛立つ。
普段から澄ましてクールな癖に、やることはちゃっかりしている。
エリオルの親友気取りか!
「ベルンハルト!」
「殿下、大きな声を出さないでください。お育ちを疑われます。既に疑っておりますが」
コイツはまた俺に対して!
「丁寧に嫌味を言うな!」
「ハル‥」
「気にするな、勉強を続けるぞ」
「はい」
小さい頃から何でもそつなくこなしながらも周りに合わせていた癖に!
いざという時にはちゃっかりしている。
「許しませんことよベルン」
「そうだ、ベルン…」
この時俺達は視線を合わせた。
敵の敵は味方という言葉があるように俺達は協力し合うべきかもしれない。
大敵を排除する為にも!
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