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第二章
49交渉と条件
しおりを挟むここで交渉するのは至難の業だ。
エリオルがいかに大賢者の称号を得ていても社交界では若造に過ぎないのだから。
「くっ…」
何としても断りたい。
だが、ソフィアを国に連れて来た時に味方になってくれた財務大臣には恩がある。
行政大臣にも祖父が亡くなり爵位を継承する時もどれだけ助けられたか解らないので困り果てた。
「条件を飲んでくださいますならば」
「ソフィア!」
「ここはお引き受けした方が得策では?」
ソフィアがにっこり微笑んでいる。
これは断ることは不可能だということだ。
「おお、引き受けてくださるか」
「ええ、ただしいくつか条件を飲んでくださるのなら」
「条件によるが…」
ソフィアはここが勝負どころだと思った。
「では一つ、法律の改正をしてください」
「は?」
最初に反応したのは宰相だった。
「まずは納税です。現在平民に税を支払わせていますが、貴族からも税を取るようにしてください」
「税をとは…」
「それから裕福な平民と貧しい平民の税の差を」
税に関しても収入に応じて貧しい民は少なくする必要がある。
「不公平が生じてます。そして国の経費には第三者の介入。信頼のおける会計士を雇ってください」
「それはこちらも考えている最中でした」
現在予算の責任者は貴族派の貴族が管理しているが、信用できるかといわれれば怪しいのだ。
「国民の支払う税は、労働の結晶です。正しく使っていただきたいのです」
王女という地位を与えられて数日、ローゼマリーの仕事を補佐する傍らで国の予算を見ることもあった。
「私が公で外交をするならば、その対価です」
「ですが…貴族から税金を取るなど簡単では」
「無駄なお金を湯水のように使っているではありませんか。金貨一枚ぐらい」
実際流行の物やドレスに宝石という贅沢品を使う中。
銅貨一枚ですら寄付しないのだから。
「ならば贅沢品にかける税金を上げてください。それで五年待ちます」
「承知しました」
とりあえず五年を待つことを条件に話はなんとか交渉した。
「ソフィア、随分と腹黒くなったな」
「すこしばかり臭い水を飲んだからかしら?」
優しいだけではだめだ。
強く賢く立ち回る必要がある。
綺麗ごとだけでは生きていけない。
皮肉にもそれを嫌と言う程教えてくれたのはバーバラだったのだから。
「私少しばかり腹黒くいきますわ」
この国で生きていく為には必要だった。
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