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第二章

41乱入

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まるでナイフのように飛んできた剣。
一瞬の事で反応できなかったが、バーバラがもし動けば無傷ですまなかった。


「この剣は…」

「言うまでもないでしょうな」

騎士や医師達は剣を見て誰のものか理解した。
その表情は真っ青で視線をそらしたかった程だった。



「随分と舐めた真似をしてくれたな」

「お義姉様!」

無表情ながらもその目は怒りであふれていた。


「王女殿下!」

「ローゼマリー殿下!」


騎士達は膝をつく。
医師達もガタガタと震えていたのだ。

「先ほど、公爵夫人は罪人として連行した」

「は?」

「違法な薬物を所持し、尚且つ前公爵夫人とその娘の暗殺の容疑者としての物証が見つかった」

「嘘よ!そんなの!」


「それだけではない。この度のお茶会で我が妹の暗殺計画を考えていたそうだ」


淡々と告げるローゼマリーに冷静だった。
対するバーバラは真逆だった。


「何が物証よ!どうせでっちあげじゃない!この女が仕組んだんでしょ!」

「馬鹿な女だ…本当に救う価値もない」


ソフィアを睨み、ヒステリックに叫ぶ。


「全部アンタの所為だ!アンタがいるから全部狂ったのよ…エリオル様も!」

「お前!いい加減に…」

「お義姉様」


これ以上は許せないと思ったローゼマリーは殴ってやろうと思ったがその手をソフィアが握る。

「いけませんわ」

「だが!この女は」

「お義姉様が殴る必要はありません」


ローゼマリーがもしここで殴ってしまえがどうなるか。
相手はまだ公爵令嬢なのだから。

それに第一王位継承者であるローゼマリーをこれ以上汚させるわけにはいかなかった。


(これは私がすべきことだわ)

これまで散々守られて来た。
もしかしたらもっと早い段階でこんな事件は起きただろう。

無事だったのはエリオルを筆頭にびったりと傍で守ってくれた人がいたから。

だがこんな体制は長く続けるのは不可能だった。
第一王女であるローゼマリーは執務が忙しくなりエリオルも侯爵の爵位を持ち戦後の後始末をしなくてはならない。

魔法使いや勇者の友人達もソフィアの警護のためにどれだけ時間を割いてくれたか解らないのだから。


(だからこそこの日を選んだのだから)

彼らの為にも邪魔な派閥をできるだけ潰しておきたかったのだから。


(本当に最後の最後まで学ばない人)


貴族派がどれだけ邪魔になっているか解っている。
その代表となるのがクレミア公爵家だった。

背後には別の黒幕がいるのだが。

それでも邪魔な存在であることは明白だった。
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