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第二章
37攻防戦④
しおりを挟むまさか毒が利かないなんてありえない。
稀に毒体質な人間はいると言われているが、御伽噺に近かった。
事前に解毒剤を飲んでいたとは考えにくい。
侍女からもそんな報告は受けていないし、どんな毒か予測するなんて無理だ。
(何でよ!)
お茶を飲む前にミルクを入れていたが、あれが解毒剤とは思えない。
ならば何所で?
侍女が間違えたのかと思ったのだ。
「侯爵令嬢…」
真っ青な表情で視線を向けるも、ミイラ取りがミイラになった状態だ。
侍女に善意でお茶を差し出すソフィアに侍女はガタガタ震えていた。
助けを求めるようにチラチラと目を逸らす。
自分に火の粉が飛ぶのを避けるためなら侍女の一人や二人どうなろうとも関係ない。
そんな中バーバラが告げた。
「飲みなさい」
毒であることを知っていながら命じたのだ。
「バーバラ様…」
「ソフィア様の配慮よ?それとも飲めない理由でもあって?ねぇ?」
「そっ…そんな」
侍女がガタガタと震えた。
ここで飲むのを拒めば怪しまれる。
かといって飲みたくない。
「主として命令よ。まさか断る気なの?」
バーバラに賛同し、二人の令嬢も促した。
自分の身が可愛いが故に侍女を切り捨てたのだ。
そして侍女は――…
「ゴフッ!」
「きゃああ!」
侍女がお茶を飲んだ瞬間嘔吐したのだ。
口から出された嘔吐した中には血が混ざっていた。
「何で…」
「ゲホッ!ゲホッ!助け…喉が!」
喉が針で刺されるような痛みの中、嘔吐が繰り返される。
「ちょっと!汚い者を私に…この無礼者!」
ドレス全体についたゲロにバーバラは激怒する。
侍女に対する心配何てあったものではなかったのだが、タイミング悪く第三者が入って来た。
「何事です!」
「なっ…無礼な」
ノックもなしに入って来た騎士にバーバラは冷や汗を流すのだが、騎士が見た真っ青な表情で倒れ込んでいる中バーバラに暴行を加えられている図式が出来上がっていた。
「公爵令嬢…なんて恐ろしい事を」
「は?何を…」
「侍女殿!気をしっかりしてください!」
「うっ…お嬢様が毒を…」
「何ですって?侯爵令嬢…貴女が毒を」
「違うわよ!そいつが勝手に言っているだけよ…お茶を淹れたのは」
「飲めと…」
断片的な言葉であるが最悪な形で受け取っていた騎士は睨みつける。
「お待ちください」
「ソフィア様、お下がりください!毒が回っているのでは危険です」
「私に用意されたお茶を侍女にも差し出したのです…このポットで」
「何ですって!ではソフィア様も…急いで医師の手配を!誰か!誰かいないか!」
騎士が大きな声で誰かを呼ぼうとしたのを見てバーバラはまずいと思った。
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