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第一章

51聖女の事情⑧

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聖地巡礼の旅は想像を絶する程に厳しかった。
まずはすべての移動は歩きで、貴族の生活が当たり前になっているテレサにはとても厳しものだった。


他の聖職者は問題なく歩いているがテレサだけ遅れていた。

「早く来なさい」

「はっ…はい…きゃあ!」

歩き疲れ、足を躓いてしまった。

「今日はこのまま野宿した方がいいかもしれませんね」

「ですが…」

「テレサは疲れがピークのようですし」

「解りました」

他の聖職者の目が突き刺さる。
言葉にしないでいたが、迷惑だと言っているようだ。


それぞれ焚火の用意をして食事の準備や、水の準備に取り掛かる中。

「何をだらけているの…早くテントの準備をなさい」

「えっ…どうやって?」

これまで視察や、村に訪問するときはすべて馬車でテントを張ることはない。
屋根のある場所で寝泊まりして、面倒なこと侍女や護衛騎士任せだった。


「聖女だったのならテントぐらい…」

「解りません」

「何をしていたのよ。貴女元平民でしょ?」

「だって…」


ぎゅっとスカートを握り唇を噛み締め泣きそうなになるも誰も慰める気はない。


「本当に何でこんな使えないのが聖女だったのかしら」

「ソフィア様の苦労が目に見えるわ」

「言うだけ無駄よ。頭が悪すぎるわ」

(だって解らないんだもん!)

聖職者達の言葉に何も言えなくなる。
本当に何もできない自分に不甲斐なさを感じるが、この場でこんな苛めのような真似をする彼女達に傷つくが。


「悲劇のヒロインぶらないでくれる」

「聖女になって贅沢三昧して、最後はソフィア様を侮辱して国から追い出したんでしょ?」

「最低ね。婚約者を奪っておきながら結局婚約者は王都追放の身にして自分は王女殿下に縋るなんて」

(えっ…)


テレサは顔を上げる。
彼女達の目は氷のように冷たかった。


「私達は聖職者だから個人の恨みで貴女に同行する気はないけど…道中巻き込まれたら解らないわよ」

「王都を出たから死ぬようなことはないけど。助けないから」

「本来なら私達は大師様に同行したくて願い出たのに」


巫女大師。
神殿を任せられる巫女の中でも高位な身分だった。

現在は高齢で引退をしなくてはならないのだが、残りの人生を聖地巡礼に使いたいと願い出たのだ。
まだ神殿を出るには若すぎる彼女達は巫女大師を心配してついて来たのだ。


「万一アンルウ様に何かあったら許さないから」


彼女達にとって巫女大師、アンルウは母親のような存在だった。
危害を与えられることなど許せないのだ。


(私は…本当に一人なのね)


王都を出ても一人。
孤独であることは変わらないと思い知るテレサだった。


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