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第一章
34断罪の始まり
しおりを挟むすべてはお膳立てされた場だった。
「罪状は上げれば限りがない。何より許せんのは自分の欲為に立場を利用した悪行三昧。貴族としても男としても許せん」
「でも!」
「黙りなさい。隣国の時期女王陛下に向かって無礼な」
反論をするヘリオスだったが、メティスが厳しく言い放つ。
「この国の第一王位継承者としてこれ以上の狼藉を許すことはできません!」
凛とした声で告げられる。
この場で反論などできるはずがないが、状況を未だに理解できていないヘリオスは食い下がる。
「聖女テレサ、貴女にも処分は下りますわ。いいですわね」
「はい…」
「ですが、考慮いたします。貴女は平民で否応なく王宮に召し上げられ貴族令嬢として振舞わざる得なかった」
「王女様…」
言ってみれば今回の騒動の被害者でもある。
その点を強調しながらメティスは国王と王妃に尋ねると二人は頷いた。
「陛下…」
「うむ、当初より聖女テレサは身を守る為に一時的にエステード家の養女にと思ったのは優秀な指南役がいたからだ」
「ええ、ソフィア嬢ならばと思いましたのよ」
元々後ろ盾は一時的なものだったが、重要なのはテレサを守り導いてくれる人物だ。
そこで白羽の矢が立ったのがソフィアだ。
ただしクラエス家に養女に迎えれば守は難しい。
聖女制度をよく思わない辺境伯爵と親しい間柄にいるカディシュの立場も考慮し、伯爵家といえど政権に影響がほとんどないエスリード家ならばと思ったが不安もあった。
しかしソフィアならばと王妃は賭けたのだ。
その結果、聖女として必要なスキルは手に入れることができたのは指南役のソフィアの努力の賜物だった。
いいとこどりのヘリオスは夜会でエスコートする程度なのだが…
「そんな…では!」
「第一、貴方は何もしてないでしょうに?勉強も淑女教育もすべて婚約者に丸投げ」
「王妃よ。元をつけぬか」
「そうでしたわね?元婚約者でしたわね」
強調する二人に唇を噛み締めるヘリオスは何も言えなかった。
「されど!このような…」
「まだ言いますの?ですが、エスリード伯爵が既に処分を受けると誓約書にサインし、領地は返上しています」
「兄上!」
「どういうことです!」
何も知らない二人はクロウリーを詰るも本人は冷めた表情だった。
「既に我が家が没落するか、多額の借金を背負い領民を飢え死にさせるかだ。なならば領民の生活を守るまでだ」
「そんなの必要ないでしょ!たかが領民よ」
「そうだ。重税すればいいんだ!平民なんか!」
この場には平民上がりの貴族も多くいる。
そして国王の側近も元平民から成りあがった官僚が多いというのに平民だという理由で自分達の生活の為に犠牲になれと言ったのだ。
「なんとでも言うがよい」
クロウリーは心底愛想が尽きた。
これまで傾きかけた家を救うために金策に走ってもまったく協力しない弟夫婦がどうなろうとどうでもよかった。
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