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②
しおりを挟む緊急に集められた私達。
聖騎士の皆さんの表情は険しく、普段ならそばにいるはずの神官も侍女もいない。
彼らはリーチェ同様に眠りに入ったそうだ。
「灰色の時代再来だ」
「お師匠、どういうことだよ」
「かつて悪魔が君臨し、世界を灰色に変えた時代がある、灰色の時代だ」
「伝承には残っていますが…まさか」
「まさか私の代で体験するとは」
神話の時代に黄金の時代、銀色の時代、灰色の時代とある。
その灰色の時代と呼ばれるようになったのは、地上に悪意が増えすぎて女神が人間を見捨てたと言われたことからだ。
誰が灰色の時代と呼んだかは解らない。
でも灰色の時代が来た後に生き物は死に絶えると言われている。
「灰色の時代には必ず悪魔が依り代を得るのだ」
「その依り代というのがあの女なのよ」
オリヴィエ様が映像を映し出す。
「これは…」
「このシルエットは」
影だけが映し出されたけど、私には誰か解った。
「「「アラクネ妃!」」」
私達の声は重なり合った。
「私は彼女に直接会ったわけじゃない。でも元聖女だったのでしょう?」
「はっ…はい」
聖女を辞任したのは聞いていないけど、風の噂では聖女の力が衰えいたと聞く。
魔力に関してもだけど、人間は老化と共に魔力は衰える。
衰えによって力が使えなくなるのは聖女も同じで永遠なんてものはない。
「聖女が過去に魔女となったパターンはある。心を操られた場合、心を闇に落としたもの」
「あの女は欲望に負けたんだろうよ…欲深かったしな」
アラクネ様は何故依り代となったのか。
周りに支えてくれる人も愛してくれる人もいるならば闇に落ちることはないはずだけど。
「悪魔の根城となった王宮は既に魔王城のようになっているようだ」
「魔王軍との戦争が終わってばかりだというのに」
戦争の爪痕がまだ消えていない。
なのにどうしてこんなことになってしまったのだろうか。
「言いたくはないが、この世に邪神が消えることはないだろう」
「教皇様!」
「アクエリアスよ。お前とて解っているだろう」
「私の祖国は魔王に滅ぼされ廃墟になりました。友や家族は悪魔の一部にされてしまいました…だからこそ悪魔を野放しにできません!」
アクエリアス様の故郷はここから南の方角。
一番最初に被害を受けた国だったと聞く。
「人は欲望の塊だ。だが、欲をあるから強くなれるのではないか?生きたい…それも欲だ」
「ルリ様…」
生きることさえ望めなかったルリ様ならではの言葉だ。
でも欲望だけが人間の性ではない。
そのことを私は知っているのだから。
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