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⑥
しおりを挟むその後も僕が寝たきりの状態の中、聖教皇国が日に日に豊かになってく噂を聞かされる。
エリーゼの採取した薬草で作られたポーションだけに限らず万能薬や、干ばつの対策をも解決し、国内の諍いをも止めたとされ国民に慕われ今では巫女姫様と崇められていると聞かされる。
僕がこんなに辛い思いをしているのにエリーゼは子を得て、民に崇拝されているなんて許せない。
――どうして!
この国にいる時は無能だったじゃないか。
王太子妃として役にも立たなかったはずなのに、才能があるなら。
そんなことを考えていると声が聞こえた。
『本当にそうか?』
もう一人の僕の声だった。
『エリーゼはずっと僕を支えてくれていたのに』
「何を言っているんだ!そんなこと…」
『困窮している我が国を守ってくれたのは彼女じゃないのか?』
違う…
エリーゼの国を守る為に婚約してやったんだ。
あんな貧しい国と同盟を結んでメリットなんてないんだから。
『そうやってすべてエリーゼが悪いと言うのか』
「事実じゃないか!」
どうしてもう一人の僕は否定するんだ。
まるで僕が悪いかのような言い方じゃないか。
『十年間傍いいたのに、何も見なかった癖に』
「違う!」
『国を失い、王族、貴族に軽んじられ、最後は離宮に追いやられても許してくれたのに』
「黙れ!僕は悪くない!」
耳を塞ぎたい。
目を閉じても声は聞こえてくる。
これ以上聞きたくないのに。
『エリーゼは女神に愛された存在だ。その彼女に今まで何をした?』
「僕はエリーゼを守ってやって来た…」
『何から守ったんだ?悪意にまみれた中に放置して死ぬことも許されなかった可哀想なエリーゼに何をした?』
可愛そうなエリーゼ?
そんなはずはない。
エリーゼは僕に愛されて幸せだったはずだ。
『何時からか笑わなくなったのに?』
「そんなはずはない」
エリーゼはいつも笑顔だった。
笑顔で…
その時ふと気づく。
エリーゼはいつも笑っていたことに。
笑顔だけしか浮かべていなかった。
でもその笑顔は作り笑いだったとしたら?
ずっと心を殺していたとしたら?
僕は…
何も見ていなかったのか?
今更ながらに思ったのだった。
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