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⑧
しおりを挟む一週間後、あの女の専属護衛騎士は年配の騎士に変更になった。
いい気味だと思っていた。
そんな折、夜会で彼と会う機会があった。
でも、彼の隣には見知らぬ令嬢がいた。
廊下ですれ違った私に会釈する令嬢はお世辞にも高位貴族とは思えなかった。
ドレスも貧相だし所作だって私のように美しくなかった。
何故隣にいるの?
誰なの。
睨みつけるように見てたら。
「彼女が気になるか」
「はい、見知らぬ令嬢ですわね」
「ああ、彼はまだ独り身だったからな。私が護衛騎士の任を解いた後に見合いをするように命じた。戦争が終われば王宮を出てあの令嬢と夫婦になる」
「は?」
「聞けば彼は婚約者がいたが、婚約解消になった後に新たな婚約者を見つけていないというではないか。体裁が悪いからな」
「そんな…」
何で…
どうしてそんな余計な事を!
「ですが、彼は伯爵家のご子息ですわ。お相手のご令嬢は…なんというか」
「ああ、彼女は下級貴族だが、彼は伯爵家の次男なら跡継ぎになれない。ならば相応の身分の娘と婚姻を結ばせた方がいい…下手に出世されても厄介だからな」
馬鹿なのこの男は。
本当に馬鹿だわ。
ルイスがあんな貧乏くさい娘と一緒になるなんて!
「本人同士も仲睦まじいので春まで待つ前に式を上げろと申したのだが、真面目過ぎるな」
何を笑っているの!
この男は何所までも無神経なの。
私の元婚約者に他の女をあてがった事を誇らしげに話すなんて。
嫌だ…
あの人が他の女に触れるなんて。
私から何もかも奪い、こんな侮辱を受けることは許されない。
私の怒りは蓄積されていく。
何所までも私を侮辱すれば気が済むの?
エリーゼ!
全部、あの女の所為で!
憎しみは日増しに酷くなり、殺しても殺したりない。
だから女として屈辱を与えてやる。
そう、王室に嫁いだ女性はお世継ぎを生むことを第一とされる。
ならばその役目を果たせなくしてやる。
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