42 / 133
11賢者の姫君~ルリチェンテside
しおりを挟む緊急で会議が行われた。
教皇猊下が眉に皺を寄せながら、告げられた事実に我らは重く受け止めた。
表向きにだが。
「例の日照り問題だ。入念に調査した結果がこれだ」
「姫さんの推測が当たったのか」
「なんということだ」
二つの村の問題。
元は双方の村は日照りが続いていたが、ある日を境に片方の村だけが雨が頻繁に降り続けもう片方の村はまったく雨が降らなくなった。
日照りは続く日はあったか、まったく降らなかったことはない。
なのにまったく雨が降らなくなったのだ。
それが人為的な者であることが解った。
「術者が、加護を奪っていたそうだ」
「なんて真似を!」
「落ち着けルリチェンテ」
感情を抑えきれなかった。
常日頃から冷静になれと言われているが、今回の事は許せるものではない。
「早急に術者を見つけようとしたが、既に術者は死んでいたそうだ」
「毒を飲んで自殺したか。もしくは」
「殺されたか…」
どちらにしても犯人は死んでしまった以上、証拠はあの世に持っていかれたということになる。
村の村長は何も知らなかったと言うが、何所まで本当か疑わしいところだ。
「今回はソフィアが早くに気づいてくれたから良かったが」
「だとしても被害は少なくない」
私達がもっと早く気づくべきだったが、姫はこんなに早く気づくとは。
「しかし姫さん、やっぱ頭はいいよな」
「おい…」
「そんな怖い目で見るなよ。褒めてんだよ」
「お黙りなさい、アンタは一言多いのよ」
まったくこの歩く恥さらしが。
オリヴィエ、もっと言ってやればいいのだ。
「教皇、この度の事件は二度とないように対策をしなくてはなりません」
「ルリチェンテ、お前も解っているだろう。簡単な問題じゃない」
この国に限らず違法的な術者は何人いるか解らない。
そのすべてを判別することは困難だ。
我がクラリス聖教皇国内に出入りする商人は多い。
「オリヴィエ、対策に関しただが」
「はい、現在結界師に協力を頼んでいます。同時に白魔導士の白魔法を使えば加護を奪うのことはできないかと」
「そうか」
考えたな。
他人の術を盗むことに特化した術師は闇魔法を使う。
闇魔法と相性の悪いのは光魔法だ。
光魔法の中でも白魔法は最高峰と言われている。
攻撃力はないが、魔法をはじくことができる。
特に白魔法は女神様の盾と言われており、呪いに近いものを遮断できるといわれているが。
現在我が国では白魔法を使える魔導士はいなかったはずだ。
「白魔法の結界なんてどうするんだよ?」
「その点ならば問題ないわよ」
「オリヴィエ、どういうことだ」
結界に関しては聖騎士の中でも一番熟知しているアクエリアスが適任だが今回は難しいと判断している。
なのに何故アクエリアスが知らないとは…
「エリーゼ姫は白魔法の使い手です。教皇猊下もご存じの通り、彼女は水の女神の加護を持つ方です」
「ああ、マリンパレスの民は皆水の籠を持っていると聞く」
「中でも王家の方々は強い加護を持っていますが、その中でもエリーゼ姫は白魔力の保持者です」
「何だと!」
白魔力の保持使者だと?
古来より伝わる稀有な魔力とされているというのに!
ありえない。
この場にいる者は誰もが思っただろう。
1,498
お気に入りに追加
4,005
あなたにおすすめの小説
勝手に召喚して勝手に期待して勝手に捨てたじゃないの。勝手に出て行くわ!
朝山みどり
恋愛
大富豪に生まれたマリカは愛情以外すべて持っていた。そして愛していた結婚相手に裏切られ復讐を始めるが、聖女として召喚された。
怯え警戒していた彼女の心を国王が解きほぐす。共に戦場へ向かうが王宮に反乱が起きたと国王は城に戻る。
マリカはこの機会に敵国の王と面会し、相手の負けで戦争を終わらせる確約を得る。
だが、その功績は王と貴族に奪われる。それどころか、マリカは役立たずと言われるようになる。王はマリカを庇うが貴族の力は強い。やがて王の心は別の女性に移る・・・
前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る
花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。
その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。
何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。
“傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。
背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。
7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。
長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。
守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。
この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。
※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。
(C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。
今世は好きにできるんだ
朝山みどり
恋愛
誇り高く慈悲深い、公爵令嬢ルイーズ。だが気が付くと粗末な寝台に横たわっているのに気がついた。
鉄の意志で声を押さえ、状況・・・・状況・・・・確か藤棚の下でお茶会・・・・ポットが割れて・・・侍女がその欠片で・・・思わず切られた首を押さえたが・・・・首にさわった手ががさがさ!!!?
やがて自分が伯爵家の先妻の娘だと理解した。後妻と義姉にいびられている、いくじなしで魔力なしの役立たずだと・・・・
なるほど・・・今回は遠慮なく敵をいびっていいんですわ。ましてこの境遇やりたい放題って事!!
ルイーズは微笑んだ。
王妃はわたくしですよ
朝山みどり
恋愛
王太子のやらかしで、正妃を人質に出すことになった。正妃に選ばれたジュディは、迎えの馬車に乗って王城に行き、書類にサインした。それが結婚。
隣国からの迎えの馬車に乗って隣国に向かった。迎えに来た宰相は、ジュディに言った。
「王妃殿下、力をつけて仕返ししたらどうですか?我が帝国は寛大ですから機会をたくさんあげますよ」
『わたしを退屈から救ってくれ!楽しませてくれ』宰相の思惑通りに、ジュディは力をつけて行った。
一年で死ぬなら
朝山みどり
恋愛
一族のお食事会の主な話題はクレアをばかにする事と同じ年のいとこを褒めることだった。
理不尽と思いながらもクレアはじっと下を向いていた。
そんなある日、体の不調が続いたクレアは医者に行った。
そこでクレアは心臓が弱っていて、余命一年とわかった。
一年、我慢しても一年。好きにしても一年。吹っ切れたクレアは・・・・・
いつまでも甘くないから
朝山みどり
恋愛
エリザベスは王宮で働く文官だ。ある日侯爵位を持つ上司から甥を紹介される。
結婚を前提として紹介であることは明白だった。
しかし、指輪を注文しようと街を歩いている時に友人と出会った。お茶を一緒に誘う友人、自慢しちゃえと思い了承したエリザベス。
この日から彼の様子が変わった。真相に気づいたエリザベスは穏やかに微笑んで二人を祝福する。
目を輝かせて喜んだ二人だったが、エリザベスの次の言葉を聞いた時・・・・
王子の婚約者を辞めると人生楽になりました!
朝山みどり
恋愛
わたくし、ミランダ・スチュワートは、王子の婚約者として幼いときから、教育を受けていた。わたくしは殿下の事が大好きで将来この方を支えていくのだと努力、努力の日々だった。
やがてわたくしは学院に入学する年になった。二つ年上の殿下は学院の楽しさを語ってくれていたので、わたくしは胸をはずませて学院に入った。登校初日、馬車を降りると殿下がいた。
迎えに来て下さったと喜んだのだが・・・
妹がいらないと言った婚約者は最高でした
朝山みどり
恋愛
わたしは、侯爵家の長女。跡取りとして学院にも行かず、執務をやって来た。婿に来る王子殿下も好きなのは妹。両親も気楽に遊んでいる妹が大事だ。
息詰まる毎日だった。そんなある日、思いがけない事が起こった。
わたしはそれを利用した。大事にしたい人も見つけた。わたしは幸せになる為に精一杯の事をする。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる