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8白薔薇に込めた思い~アルバシアside
しおりを挟む長きにわたった魔王軍との戦争が終結したのはつい最近の事だった。
安堵する者や喜ぶものは多く、しばらく各国は勝利を喜びパレードを催していた。
どの国も浮かれる中、私は呆れていた。
「戦後の復興がどれだけ大変か理解しているのか」
震災の後もそうだが、復興活動にどれだけの年月と費用が必要になるか。
そのことを考えると私はあまりにも軽率だと思った。
「安堵するのはまだ早いというのにな」
「同感だ」
私の言葉に賛同したのはアクエリアスだった。
同じく聖騎士で見習い時代からの顔見知りでもある彼は魔王軍の侵略により国を失った。
国を失った後は亡命するしかないが焼け野原となった国を立て直そうとした者もいる。
それがどれだけ大変か理解しているからこそ私の意見に賛同してくれたのだろうが、いざ復興作業を始めた時に気づくだろう。
被害の少ない国や、大国に守れているだけの国は。
「戦争に貢献した我が国に媚びを売る国が多い…領土と支援金の代わりにどこぞの姫を下賜するなんてことにならないといいが」
「そんな前時代的な事をする馬鹿はいないだろう」
万一下賜されても不要な姫だったり国内で問題の姫である可能性がある。
双方とも異なる虐げられた姫という可能性もあるが、どちらにせよそんな真似をされたらし差し出した国も誹りを受けるのは確実だ。
自ら自分の国を貶める馬鹿はいないと思っていたがその馬鹿が現れた。
しかもあろうことにも妃を下賜して戦争で戦った際の被害の援助金を妃一人で帳消しにしろとのことだ。
あげく傍若無人に振る舞い、妃を下賜した後は同盟を解消したいと言っている。
遠回しにこちらが戦時中に防衛した恩を仇で返したのだ。
「別に恩を返して欲しいわけじゃない」
「だが、他国の援助金を少し回すのは条件だったはずだ」
「なのにこのような」
同僚は憤りを感じていた。
私達だって余裕があるわけではない中戦い、焼け野原となった国も多く彼らの多面い墓を建てたり、魂を眠らせるための儀式には費用が必要だ。
だからその援助を約束しておいたのに破られたのだ。
「聖騎士に妃を下賜するとなると…」
「私が担おう」
聖騎士の筆頭のルリチェンテは女性だ。
その次に地位のある騎士は思う相手がいたり、若すぎたりとあるが。
厄介な妃を任されるのであれば私が請け負う方がいい。
形だけの夫婦だ。
私は既に人として心を捨てた身だ。
毒を纏い、人と関りを捨て他人から化け物と思われているのだから。
「しかしアルバシア…」
「そうだ。そんな真似」
自己犠牲だとは思ってない。
妻と迎えた後に私は粗末に扱うつもりはない。
だが私の身では本当の意味で夫婦になる契りは無理だろう。
毒の体もあるが私が処女女神の加護を持つ故に正式な契りを交わすことは無理だろう。
「せめてマシな妃ならいいんだけどな」
「マクシミリアン!」
「だってそうだろ?あの強欲王の妃ってだけでも悲惨なんだぜ?どっちだ」
「かなりの幼女かもしくは中年か…」
この時はまだ、私に下賜されるかもしれない気の毒な妃の顔も名前も知らなかった。
「そういえばよ、アグナれる王国っていやぁ、あの姫さんは元気かな」
「おいこの変態騎士。貴様エリーゼ妃に姫さん等と無礼な呼び方はやめんか」
「んだよ…いいじゃねぇか」
「彼女は亡国とは言え元王女だぞ」
貴族でありことを誇りに思っているルリチェンテはマリンパレス王国の最後の王女に敬意を持っていた。
太陽の王女と呼ばれるあの方を。
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