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③
しおりを挟むあの日、私はちゃんと告白しようと思った。
アルバシア様には嘘をつきたくなかからちゃんと言おうと思った。
――なのに。
「アルバシア様、私は貴方に言わなくてはならないことが」
「何だ」
「もうご存じとは思いますが私は一度結婚しております」
「ああ」
緊張しながらも私はじつとアルバシア様を見つめて私はまだ男性との肉体関係がないと言おうとしたのだが。
「無理をしなくていい」
「は?」
「解っている。私に負い目を感じなくてもいい」
「あの…」
アルバシア様は労りの視線を向けながらそっと私に触れた。
「しかし不思議だな」
「何がでしょう?」
「私はアルテミスの加護を持つのだが、彼の女神は処女女神だからな…男と関係を持った女性には相性が悪いと聞いてる」
それは私が男と関係を持っていないから。
「まぁ私の毒に耐えられる人間はまずいないから例外だろう。水の女神の加護があるからだろうか」
水の女神の加護を持つゆえだというのは解るけど。
「それはですね」
「きっと、貴女の心が綺麗だからだ」
「いえ、そうではなくて」
「だから、気にしないで欲しい」
ああ、天然だ。
かなりの天然記念物だわ。
私の話を聞く前に勝手に勘違いをしている。
「挙式の夜に契りを交わすことになる」
「挙式の時とは別ですか」
「いいや、挙式と契りの時に二人の処女女神に誓いをした後に契り合う男女が愛の誓いに薔薇の紋章を刻むんだ」
言い回しがかなり生々しい。
「ただ、一度他の男と契っている状況だと、穢れを抜かなくてはならない」
「はっ…はぁ」
「その場合は通常の契りよりも少しツライかもしれないが、できるだけ負担にならないようにしよう」
この人、基本はいい人なんだけど。
勘違いと思い込みが相当だと思った私は間違っていないはず。
「私はどんな貴女でも受け入れる。だからそんな悲しい目をしないでくれ」
「いえ、そうではなくですね」
「私を信じて欲しい」
もう無理だ。
どうあっても私の話を聞く気はない。
いや、聞く気がないというよりも勘違いをしている。
恐らくこれ以上私を傷つけないようにしようと必死なのだろう。
だけどこれってまずくないかしら?
いざ初夜の本番になって実は初めてでしたなんて言ったら困らないかしら?
でも、完全にタイミングを逃してしまっている。
せめて侍女に相談をと試みたのに。
同じような反応で言えずじまいになってしまった。
そして現在に至る。
「どうしよう」
どうにかなるかな?
なるようになるか?なんて行き当たりばったりな事を考えてしまっていた。
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