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明らかな落胆な目を向けらるもアラクネは何も言えない状況だった。

何故なら、王家に反発心を持つ貴族を窘めるのは王太子妃や寵妃の役目でもあるのだがその役目をエリーゼ一人でこなしていたというなら問題だ。

「この話は後にしましょう。次に同盟国の王妃陛下より戦後の誕生祭の花に関してですが、昨年と同様の花にして欲しいとのことです。そちらは王妃陛下が…」

「待って、何の話?」

「えっ…」

アラクネは知らないというような表情をしていた。
同盟国の一つ、清の国で行われている誕生祭では決まった花を用意して祝うのだが何故そんな顔を?


清の国は我が国と長い歴史の中、交流がある。
何度も貴賓を迎え対応をしたはずだ。

「通訳は例年道理必要ありませんな。あちらの国の王妃陛下は通訳を置くことを嫌っておりますし。こちら側としても通訳を置くことは王妃陛下の評価に関わります」


「ちょっと待って…私は」

「王妃陛下は語学も堪能でしょうし。他の同盟国の言葉も問題ないということで」

「待って。そんな…」

「余計な経費は削減しますので、当日の四か国語は通訳無しで既に手配をしていると聞きいております」


通訳を置かないのは今に始まった事ではない。
これまでは、スピーチの内容を考えていたのはエリーゼだが、アラクネが訂正をしていたぐらいだ。

この程度どうということもない・

「何を今更…通訳など必要ない。そうだアラクネ…私の挨拶も考えておいてくれ。それから当日は清の国の皇后陛下が喜んでくださるお茶とお菓子を頼めるか?後は宗教国を接待したいので歓迎の食事も」

「私が…ですか?」

「そうだ。これまで君は何度もお茶会を開いていたんだ。できるだろう」

「貴族のお茶会とはスケールが…」


どうしてそんな顔するんだ?
まさかできないんていうはずがないだろう。


「陛下…」

「できないはずないだろう?王妃が軽々しくできないなんて口にするなんて許されない」


「はい」


顔を俯かせながらも頷くアラクネ。
思えば彼女は王太子妃ではなく妃でしかなかったのだから正妃の在り方を理解していない。

慣れるまで時間がかかるだろうが。
私も国王となって数日だ。


フォローしてやりたいがその余裕はない。
早く盤石なものとしなくてはならないのだから。


「では次に、次の議題ですが宰相」


「はい、次は戦後の復興活動に関してですが…予算がまったくたりません」

「ならば税金を増やせばいいだろう。先王も同じような事をしていたのだから」

「税金を…ですか」

「税金を支払うのは国民の義務だ。国がピンチなら当然だろう」


宰相はどうしたというんだ。
税金を増やして予算を増やす等どうさもないだろう。


父上も若かりし頃は同じような事をしていた。


そういえば戦時中に重税をしようとした時に…


『税を増やそうと思う』

『二年後の話ですか?』

『いや半年以内でだ』

『法案を通すにも時間が必要です。財務大臣、行政大臣に話を通した後に会議をしないとなりません。それに今でもスラム街が増えているのに飢える人が…』

『大げさだ。そんなのは一部の人間だ…国の為に税を増やるのは当然だ』

『ですが!』


あの時は結局私の意見は通らず、エリーゼが他の方法を考えたが、所詮は世間知らずのお姫様の考えだ。
戦後の状況を考えれば重税をして、予算を増やす必要がある。

国民も王家の為なら喜んで納得するとはずだ。



――そう思っていた。


なのに、その案は却下された。



「陛下、東北の方で暴動が起きました。国民は既に限界を達しています!」



一人の若い貴族が重税に反対し、一部の領地で暴動が起きたことを告げられた。

彼は騎士団に属したいた…


「リンメル様…」


アラクネとは幼馴染だったと聞く。
優秀な男で王家にも忠誠を誓っていたので私が王太子時代に良い縁談を進めたのだ。


「だがこれまでは大人しかったではないか」

「あと少しと、戦争が終わるまでと考えていたのです。それにエリーゼ様がそのつど対策を」

またエリーゼなのか。
どいつもこいつもいなくなった人間の事を!


「王妃陛下、どうお考えですか」


「私は…その」


今までなら的確な助言をくれたのに。
アラクネはどうしたというんだ。


これがきっかけただった。
上手くいかない改革、通らない法案に、私の命に背く臣下。


国王となってから慣れない事が続きイライラが募るようになった。

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