寵妃にすべてを奪われ下賜された先は毒薔薇の貴公子でしたが、何故か愛されてしまいました!

ユウ

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2王女の意地

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公開処刑とはこういうことを言うのかしら?
国王陛下はニヤリと笑いながらも、さも私に恩着せがましい態度だ。


「これは大変光栄なことだ。エリーゼ」

「ええ、本当に。国の為に尽くせるのだから」

王妃陛下も笑っている。
貴族も侍女も騎士達も拍手をしている。


「素晴らしい事です」

「国の為に尽くせるのですからこれ以上の幸せはありませんな。国王陛下はなんとお優しい事で」

「大切な役目を与えてくださるのですから」


さも慈悲を与えたかのような言い分だった。


だけど、通常なら王族が降嫁されるにしてもあまりにもありえない条件だった。

彼ら曰く私は身一つで嫁げということになる。


現に国王陛下は――


「クラリス聖教皇国は慎ましやかな国故に身一つで嫁ぐように。そなたの国も慎ましやかだった故にな」

遠回しに私の故郷を侮辱している言い方だわ。
確かに裕福ではないけど、お金の使い方を心得ているだけなのに!



何所までも侮れば気が済むのか。
私が嫁ぐ際に多額の資金を要求して領土もよこせと命じていたくせに!



ここで吐き捨ててやりたい。
課の亡者だと。

でも私はそんな真似はしない。


「お心遣い痛み入ります。承知いたしました」

「これまでの恩を返すと思い、尽くすのだ」

「…はい」


恩を返す?
長年虐げられ蔑まれ続けて来たのに。


だけど私は耐えないと。
こんな連中に心を乱されてはならない。


私は亡き王国。
父上や母上の志を引き継いでいるのだから。

最後の生き残りとして私は最後まで王女らしく、そして王太子妃でもあったのだから。


最後まで誇りを捨ててはならない。



「今までお世話になりました国王陛下、王妃陛下…エルバート殿下」


私は笑顔を浮かべながらお辞儀をする。


「本当に最後まで役に立たなかったわね」

「この程度しか使い道はなかったがな」


最後の最後まで嫌味しか言えない人達に私は笑顔を忘れることはなかった。


きっとエルバート殿下も内心では喜んでいるのだろう。


そう思っていたのだけど――。


「父上、母上…どういうことです」


「陛下、このような話は聞いておりませんわ」


何故か驚くエルバート殿下とアラクネ妃。


どうしてそんな表情をしているのか私には解らない。


「エリーゼを下賜する?そんな話は…」


「何を驚く必要があるのです。アラクネ嬢が正妃となれるのですよ」

「しかし…それならばエリーゼを側妃にすればいいではありませんか…何故」


本気で言っているのかと思うと私は頭が痛くなる。


エルバート殿下はそこまで私を馬鹿にしていたの?
今ですら王宮で責められているのに正式にアラクネ妃が王太子妃…いいえ、王妃となれば私はどんな扱いを受けるか。

最悪暗殺される可能性が出てくる。

それが解らないはずがない。


「ですが、エリーゼ様は我が国の王太子妃だというのに。降嫁等あんまりでは…」


「黙りなさい。これは決定事項です。貴女がエリーゼ姫に同情的なのは解りますが」


「うむ優しいのはそたの美点であるが、すべては国の為だ!」



国王の言葉は覆ることがないと言われ誰もが賛同する声をあげたのに二人は納得できないという表情をしていた。

その意味を私は理解できずにいた。

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