内弁慶ならぬ、ウチお茶目だった父

 偉人、一般人に関係なく、人の生きた年数だけ、歴史が誰にでもある。それが文字として残るか、人の記憶として留まるかの違いだ。たまには思い出も掘り起こしてあげないと。辛い記憶に目を背けても構わないが、楽しい思い出も発掘すれば出てくるはず。要はキッカケとなる断片を見つければ、連動して思い出は蘇る。
 ごく一般的な、面白みもない家族と自分では思っていても、他人からすると「え?」と思うこともある。例えば父が運転中に、前方を走る車の左折右折や高速道路での進路変更に悪態をつくのを、私は普通だと思っていた。だが何かの折に友人を父の車に乗せたとき、友人は「面白いお父さんだね」と言った。どうやら他の人は運転中に、悪態をつかないらしい。カルチャーショック。
 数名集まって、家庭料理の話をするとそれぞれの家庭の個性が際立つ。東日本の友人たちは主に豚肉をカレーや肉じゃがに使い、西日本育ちの親を持つ友人は牛肉メイン。我が家は境界線の愛知県の影響が強いせいか、はたまた父の好みだったのか、牛肉をカレーや肉じゃがに使っていた。そういえば愛知って鶏肉文化だったはずだが、父は唐揚げや鍋やお雑煮ぐらいしか鶏肉を好まなかった。味噌汁は赤出し、具材の入れ過ぎにはうるさい。だが天ぷらの翌朝には、味噌汁に余った天ぷらを入れて食べていた。家族は行儀が悪いと呆れていたが、TV番組で愛知県民は味噌汁に天ぷらを入れるのが普通だったらしい。本当に、日本には地域独自の文化があって面白い。それが家族単位ともなれば、星の数ほど個性があるだろう。
 亡き父は、外では無愛想だったが、単に人付き合いか不器用なだけだった。お酒の力を借りないと、会社の同僚や町会でも話せなかったほど。
 だが家族の中では父がお茶目と言うか、笑えると言うか、予想と違う言動に困惑することも、しばしば。父のの言動に家族が振り回されることも多々あった。
 これは父をメインに、母や兄、祖父母の思い出を纏めた独り語り。
 誰もが、誰かが生きた記憶のアルバム。この記憶が消えない限り、亡き人もこの世から消えることはない。たとえ肉体が消えて、共に人生を歩めなくなったとしても、大好きな人達は存在する。思い出す度に、彼らは何度でも蘇るのだから。
24h.ポイント 0pt
2
小説 192,826 位 / 192,826件 エッセイ・ノンフィクション 8,162 位 / 8,162件

あなたにおすすめの小説

お菓子な物語~sweets story~

みのる
エッセイ・ノンフィクション
読み進めるとなんだか食べたくなる(?) お菓子にまつわるstory。 さぁ!オヤツの時間ですよ? (※作品では仮名を使用しております)

人工知能でif歴史〜もしもの歴史シミュレーション〜

静風
エッセイ・ノンフィクション
もしもの歴史があった場合、それには独自の魅力があるかもしれません。本書の目的は、そうしたもしもの歴史について、人工知能を使って再現し、その魅力を伝えることです。この文章自体も、人工知能が生成したものです。本書では、手作業を極力避け、人工知能を活用して文章を作成していきます。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

カーサンへ

はまだかよこ
エッセイ・ノンフィクション
同居していたキジトラ猫のなつきが旅立ちました。彼女から来た手紙、是非お読みくださいね。

詩集

猫ちゃん大好き
エッセイ・ノンフィクション
他のサイトで投稿している詩を集めました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

10月の満月 ハンターズムーン

鏡子 (きょうこ)
エッセイ・ノンフィクション
正体は何者であるか? だんだん全貌が見えてきました。 私のスマホのハッキングしているのは誰なのか? どの組織に繋がるのか?謎を追いかけます。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...