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第二章

9 遠慮がなさすぎる騎士(☆)

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「な、な、なんですって!?」

 マージェリィは、騎士に言われた言葉の意味が分からなかった。
『愛撫に身悶える貴女を見ながら自慰をしても良いだろうか』――それぞれの単語は当然分かるのに、意味のある文章として頭に入ってこない。
 後ろから抱き締めてくるレヴィメウスは愛撫の手を止めてはくれておらず、マージェリィがその絶え間ない心地よさにびくびくとしながらも呆気にとられていると、背後から高らかな笑い声が聞こえてきた。

「くっ、……ふはははは! ろうじろ主よ。如何に心身を鍛えた騎士とて本能を刺激されればこの通りよ。主の色気に堪え兼ねて、自らの矜持より欲望を満たすことを優先するときた」
「仕方なかろう、騎士というものは禁欲生活を強いられるものなのだから……! この光景は、私にとって拷問に等しい……!」

 騎士が苦しげに叫び、肩で息をし始める。切なげな表情から視線を下にずらすと、白く立派な騎士の礼服はその裾辺りが内側から押し上げられていた。下半身が起ってしまっているらしい。

(わはあ……騎士さま、とっても興奮してる……)

 見目よい顔と性的な反応を示す肉体とのギャップにマージェリィも釣られて興奮してしまう。

 とはいえ愛撫される姿をおかずに自慰をさせてくれなどと頼まれて、おいそれと頷けるはずもない。
 マージェリィがレヴィメウスの指の動きに翻弄される中で何も答えられずにいると、レヴィメウスがふと愛撫の手を止めた。ゆっくりと腰を下ろしていき、胡坐を掻いた上に主人を座らせてから会話を再開させる。

「騎士よ。そこから一歩も動かぬと約束できるならば拘束を解いてやろう」
「――!」

 薄緑色の瞳がきらりと光る。金髪を振り乱しながら何度もうなずく。

「ああ、ああ! もちろんだ悪魔殿。騎士の誇りにかけて、魔女殿に一切の手出しはしないと誓う!」
「ふ。まあよかろう。我が至宝、主の艶態、とくと味わうが良い」

 レヴィメウスは一旦マージェリィの片方の胸を解放すると、自分の顔の前に手を掲げた。
 パチン、と軽やかに指を打ち鳴らした瞬間、騎士を縛り付けていた蔓が弾け飛んだ。
 自由を得た騎士がじれったそうに礼服を脱いでシャツ一枚の姿になり、続けてズボンを下ろそうとする。しかし勃起したものが引っ掛かったらしく、歯を食いしばった必死な形相でズボンと下穿きをずり下ろすとマージェリィの前にしっかりと起ち上がった性器を堂々と露出した。

(わはあ……。すごい、びんびんになってる……)

 男性器を生で見るのはレヴィメウスに続いて二人目だった。レヴィメウスの浅黒い芯と違い、色白な騎士のそこは赤黒かった。
 見られていても気にする様子もなく、必死な形相でマージェリィを見ながら自分の下半身を扱き始める。
 肌の擦れる音が卑猥で、マージェリィは息を吞んだ。
 その直後。

「わわっ!? やだやだそっちはダメえっ!」

 レヴィメウスがマージェリィの下着の中に手を差し込んできた。
 秘所に触れられて初めて、そこがすっかり濡れていることを実感させられる。
 ぬるぬるになったそこを指先でなぞりながらレヴィメウスが小さく笑った。

「ふ。主よ。すっかり濡れそぼっているな」
「やだやだやだあっ、恥ずかしいよお……!」

 足を閉じて抵抗を試みても全く効果がなく、ぬるりと指が体内に侵入してくる。長い指は幾度か輪を描くように中を掻き混ぜたあと――ぐっと曲げられて内側から腹を突いた。

「――はうっ!」

 強烈な快感にびくりと背が反る。
 マージェリィのその反応にレヴィメウスは笑い声を洩らすと、胸の先端と体内とを同時に刺激し始めた。
 ふたつの快感が体の中心で繋がり耐えがたい心地よさを生み出せば、声で発散せずにはいられなくなる。

「あっあっあっあっ、やだっやだあっ、いっぱいきもちいの、だめえっ……!」
「ふ。主よ、我の指をこんなにも締め付けておいて嫌だはなかろうよ」
「ふえええん……!」

 騎士に見られている状態で感じたくないのに体は燃え上がる一方で、マージェリィは恥じらいと気持ちよさとに翻弄されて目を潤ませた。
 歪んだ視界の中に、真っ赤に染まった騎士の顔が見える。騎士は恍惚とした眼差しでマージェリィを凝視して、夢中で自らの芯を擦っていた。

「ああ、魔女殿、魔女殿……! なんと艶めかしいのだ貴女は……!」
「わはあ……」

 まっすぐ見つめてくる瞳は美しいのに性器を弄る様子が生々しくて、あまりの落差にただでさえうるさい心臓がますます激しく脈打ち始める。
 騎士と見つめ合った状態でレヴィメウスの愛撫に浸っていると、レヴィメウスがマージェリィの髪に頬を擦り付けてきて、低い声で囁いた。

「主よ。騎士ばかり見ておらず、我の愛撫に集中せよ」
「ひんっ……!」

 とんでもない色香を孕んだ声が耳から流し込まれてぞくりと背筋に震えが走る。
 縮こまったマージェリィに追い打ちを掛けるようにレヴィメウスの指が二本に増やされぐちゅぐちゅと水音を立てて中を掻き混ぜ始めた。さらに強くなった快感に引きずり込まれていく。
 閉じてしまった目をそっと開くと、騎士は相変わらずマージェリィを見つめたままで、眉根を寄せて息を弾ませていた。
 芯を扱く手の動きがどんどん速くなっていく。舌なめずりをし、食いしばった歯の隙間から鋭い息を洩らし始める。

「っ、魔女殿、魔女どのっ、私は、もうっ……――うっ!」

 抑えた声と一緒に、騎士の芯の先から白く濁った体液が放たれた。

(わわわわ……!)

 男性が射精する瞬間なら官能小説で散々読んだことがあるものの、その光景を目撃するのは初めてだった。
 草の上に、はたはたと白濁液が散らばる。

「はあっはあっはあっはあっ……」

 騎士が綺麗な顔に汗を浮かべて全身で息をしている。
 森の木々のざわめきと、イケメン騎士の乱れた呼吸音。そのギャップに意識を持っていかれてしまう。
 騎士が吐精する瞬間を目の当たりにしてどきどきしたマージェリィは、騎士の真っ赤になった顔と濡れた芯の先を凝視してしまった。

(わはあ……すんごいもの見ちゃった……)

 レヴィメウスの愛撫だけでなく視覚からも興奮させられて、指を入れられているところがびくびくと痙攣する。
 口の中に唾液が滲み出し、ごくりと喉を鳴らす。
 するとレヴィメウスが耳に唇を押し当ててきた。

「主よ。我も主と繋がったら、主の奥深くであのように果てるのだぞ」
「うん……」

 色気をたっぷりと含んだ囁き声に、ただでさえ速い鼓動がますます騒ぎ出し、息苦しくなる。
 直後、胸から外された手に視界を覆われてしまった。
 不意に訪れた暗がりで、熱を帯びた声が耳から流し込まれる。

「思い浮かべてみよ。いつか我が、主の中に熱を放つ瞬間を」
「うんっ……!」

 指の抜き差しがさらに激しくなっていく。きっとこんな風に、もしかしたらこれ以上の、とてつもない快楽を与えられながらこの淫魔は私の中で欲望を解き放つのだ――。

「あっあっあっあっ、レヴィメウスっ、私、わたし、もう、イっちゃうう……――きゃあん!」

 ぐっと内壁に指を突き立てられた瞬間、マージェリィは頭が真っ白になり、騎士の見守る前で達してしまったのだった。


   ◇◇◇◇


「あー恥ずかしかったあ……」

 マージェリィが泉でもう一度水浴びをしている間、騎士はというと泉のほとりで水面に背を向け膝を抱え、なにやら呟きながら項垂れていた。初めて見たときの凛々しさはどこへやら、どんよりとした雰囲気を醸し出している。

「私は何ということをしてしまったのだろうか……」

 小声の嘆きが微かに聞こえてくる。落ち込む騎士を宥めるように白馬がじゃれついていて、随分と懐いている様子が微笑ましかった。

 結局また濡れてしまった下着を浄化魔法で洗って穿き直し、身なりを整えてから騎士の元へと行く。
 騎士はマージェリィに気付くなり素早く土下座の姿勢を取ると、地面に額を打ち付けた。

「魔女殿、私は貴女の森に侵入したのみならず、貴女の乱れる姿を自慰に利用したこと、詫びのしようもない……!」
「あーもういいから。気にしないで。二度と森に入って来なければそれでいいよ」
「魔女殿の寛大な御心に感謝する……!」

 マージェリィが苦笑する中、ゆっくりと立ち上がった騎士は再び深々と頭を下げた。その動きに合わせて金髪がさらさらと流れる。日の光を浴びて輝く髪が綺麗だなとマージェリィは呑気に思ったのだった。



 颯爽と白馬に跨った騎士が遠ざかっていく。
 馬の足音が聞こえなくなる程度に充分に離れたあと、マージェリィはその後ろ姿に向けてステッキを振った。
 騎士の頭上に赤と黄色のハンマーが出現し――ぴこん!と一度だけ思い切り騎士の頭を殴り付けた。

「うっ!?」

 衝撃を受けた騎士が、がっくりと項垂れ白馬の上で完全に動きを止める。しばらくそのままの姿勢で固まったあと――不意に頭を起こすときょろきょろと辺りを見回し、首を捻った。
 その様子をマージェリィと共に見ていたレヴィメウスが興味深げに問い掛けてくる。

「主よ。あの者に何をしたのだ?」
「忘却魔法を掛けたの。騎士さまはきっと、さっきみたいな出来事ってずっとずーっと悔やみ続けそうでかわいそうだからね」
「主の裸体や艶態を忘れさせたいのではないのか?」
「そっちも忘れて欲しいけど! 素敵な騎士さまは騎士さまらしく凛々しくあってもらった方が私としても嬉しいというか……まあ、二度と会わないけど……」
「随分と気に入ったようだな」
「まあね。見た目はホントに私好みだし」

 そう言った途端、並び立つレヴィメウスがぷいっと顔を背ける。
 その仕草を不思議に思ったマージェリィがレヴィメウスに一歩近付いてまじまじと顔を見上げると、口を尖らせた表情がそこにはあった。

「レヴィメウス、もしかして焼きもち焼いてるの?」
「当然であろう。我は主の下僕であるがゆえ主の趣味に口出しできる身分ではないと理解はしている。しかし主が我以外の者に懸想するなどできればあって欲しくないと、そう願わずにはいられぬのだ。我は、我こそが主の一番でありたい」
「ふふ、ありがと、レヴィメウス。私、レヴィメウスの見た目も大好きだよ。きっとこれからもっと、あなたのことを好きになっていくと思う」
「本当か!?」

 振り向いたレヴィメウスが黄金色の瞳を輝かせる。その煌めきは満月の光のように美しかった。

「我も、主に一層気に入ってもらえるようあらゆる手を尽くそう」
「あはは、期待してるね!」

 ただの召喚主というだけでこんなにも好きになってもらえるなんて――好意をぶつけられることに慣れていないせいか、心がうきうきしてしまう。

 その後、樹液を回収し終えたマージェリィはレヴィメウスと手をつないで馬車に戻り、まるで恋人同士のようにぴったりと寄り添ったまま帰路に就いたのだった。
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