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第一章

4 淫魔の涙(☆)

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 ベッドに寝かせられたマージェリィが緊張に固まっていると、膝裏を掴まれて両脚をぐいと大きく広げられた。

(うわわわ……こんなに足開かなきゃいけないの!?)

 今まで生きてきてここまで足を広げたのは初めてかも知れない、そう思うと同時に、数々の官能小説で読んできたどのベッドシーンの女性もこんな姿を晒していたのかなと思えばそれぞれの物語の登場人物が顔を真っ赤にしたりうろたえたりするのも分かる気がした。
 黄金色の瞳がマージェリィの股をじっと見下ろしている。恥ずかしくて咄嗟に手を伸ばしそうになったが、邪魔しちゃいけない、そう自分に言い聞かせて腹の上で両手を握り締めた。

「わわ……」

 ひたり、とレヴィメウスの性器の先端が押し当てられた。その感触で、自分のそこが随分と濡れていることを改めて思い知らされる。
 これから未知なる感覚に襲われる、その不安感に息を詰めていると、レヴィメウスもまたごくりと息を呑んだ。

(淫魔でも緊張はするんだ……)

 と胸のうちに独り言をこぼしつつ、真剣な面持ちを見上げていると、マージェリィの秘所を見下ろしてきていた目がふと持ち上げられた。視線が合えば、ふわりと柔らかな笑みを浮かべる。

「……入るぞ」
「う、うん」

 レヴィメウスの熱い両手がマージェリィの腰をしっかりと支える。
 これまで生きてきて誰にも触れさせたことのなかった箇所が、じわじわと広げられていく。

 レヴィメウスが私の中に入ってくる――。

 と思った次の瞬間。


 みしっ。


 と、破滅的な感覚が股ぐらに走った。


「いいいいっ……たあああうあああああい!」


 初めて味わう痛みにマージェリィはほとんど悲鳴と化した叫び声を上げた。
 今まで生きてきてその部分にこれほどまでの痛みを感じたことはない。命の危機を感じてシーツに肘を突いてあたふたとレヴィメウスの下から脱出する。

「ごめんレヴィメウスちょちょちょちょちょっと待って! なんか今すっごく痛かったんだけど! 初めては痛いって本に書いてあったけどこんなに!? こんなに痛いの!? 私の体がおかしいのかな!? さっきくらい痛いのを我慢してればいつかは慣れて……」

 混乱に任せて質問を畳み掛けたマージェリィは、レヴィメウスの様子を見てぴたりと口を噤んだ。
 ついさっきまで余裕と色気たっぷりの笑みを見せてきていた淫魔はいつの間にかがっくりと項垂れていた。それを追うかのように、ぎちぎちに張り詰めていた芯の角度も徐々に下がっていく。

「はあ~~~~~~~~~~~~」

 ものすごく長い溜め息が吐き出される。レヴィメウスは両手と両膝を突いた姿勢で全身から息を吐き切ると、腕から力を抜き、ぱたりとうつぶせに倒れ込んだ。顔まで正面からべったりとシーツに埋めてしまっている。
 苦しくないのかなとマージェリィが心配していると、籠った声が聞こえてきた。

「やはりなああああ……こうなると思ったのだ」

 弱々しい呟きに続けて鼻をすすり始めた。どうやら泣いているらしい。
 マージェリィはその場に正座するとレヴィメウスに触れるぎりぎりのところであたふたと手を振り、視線を返してもらえているわけでもないのにぺこぺこと頭を下げた。

「ホントにごめんねレヴィメウス。私が慣れてないせいで」
「否、主のせいでは決してない。我の男根が人間のおなごの膣に対して大きすぎるのがいけないのだ」

 のっそりと起き上がったレヴィメウスは、丸めた両手の甲を目に当ててしくしくと肩を震わせた。
 そんな弱り切った様子と完全に脱力している巨大な性器との落差に面食らってしまう。
 つい見てしまったそこから視線を剥がして顔を見上げる。レヴィメウスは耳まで真っ赤にして泣きじゃくっていた。手の甲で拭っても拭っても大粒の涙が溢れ出している。
 男性が泣くところは今まで見たことがなかったし、自分も相手も裸を晒し合っている状況というのも当然経験がなく、初めて尽くしのオンパレードで慰めの言葉がまるで思いつかない。しかし涙を流す淫魔があまりに不憫で、せめて体が冷えてしまわないようにと肌掛けを引き寄せて自分たちの膝に被せた。それから自分の胸までそれを引き上げて体を隠すと、ひとまず淫魔の頭や角をそっと撫でてみた。

(とっても悲しそう。こんなとき、なんて言ってあげたらいいんだろう……)

 淫魔の不憫さに胸を痛めると共に艶やかな黒髪にしばらく手のひらを滑らせていると、ずっと目を押さえていた両手が下ろされていった。ようやく泣き止んだレヴィメウスはひとつ大きな溜め息をつくと、弱々しい声で語り始めた。

「取り乱してすまぬな、主よ。我は毎回これが原因で、呼び出されてほんの数時間で帰らされるのだ……。前におなごを抱けたのは二千年前ぞ」
「二千年前!?」
「その後、今までに呼び出されたのは七回。いずれも挿入に失敗して即座に契約解除され魔界に突き返されておる。我は淫魔ぞ。だのに長らく誰とも性交できておらぬ。淫魔の名折れだ」
「魔界に突き返される!? 呼び出しておいてそんなひどいことする人が居たの!? なんてかわいそうに……!」

 想像以上の悲惨な過去に涙を誘われる。
 マージェリィは目尻に溜まった涙を素早く払うと、レヴィメウスの手を取り上げてぎゅっと握り締めた。
 途端に見開かれる黄金色の目をじっと見上げて心の底からの思いを言い聞かせる。

「ねえレヴィメウス、私がどうにかしてあげる! レヴィメウスくらいおーっきな性器でもすんなり入っちゃうくらい、めいっぱいぬるっぬるの潤滑剤を私が調合してみせる!」

 両手をいっぱいに伸ばして淫魔の巨根を表現しつつ、満面の笑みを浮かべてみせる。
 その動きで肌掛けが腹まで落ちてしまい、思い切り胸を晒してしまった。
 慌てて両手で自分を抱き締めるようにしてそこを隠しつつ再び目の前に視線を戻すと、レヴィメウスはぽかんと口を開けていた。

「我を魔界に突き返さないのか……?」
「当たり前でしょ! そんなひどいことしないよ! あなたの淫魔としての誇り、私が取り戻させてあげる!」
「なんと慈悲深い……! そのような言葉を掛けてくれた召喚主は主が初めてだ……!」

 ぐいと腕を引かれて胸の中に掻き抱かれる。
 息苦しいほどに抱きすくめられれば素肌に熱い体温が沁み込んでくる。
 またしても初めての経験にどきどきしていると、レヴィメウスが髪に頬ずりしてきた。

「ああ、主よ……! 我はたった今、主に心を根こそぎ奪われてしまったぞ。なんと愛おしいのだ主は……!」
「わはあ……」

 ストレートな愛情表現に、思わずマージェリィは固まってしまった。
 どぎまぎしながら恐る恐る抱き締め返してみる。その拍子にあることに気が付いた。

「あ。よくよく考えたら……私が頑張るのって私自身のためにもなっちゃってるから、そんな風に『愛おしい』とか言ってもらえるような御大層なものでもない気がしてきたんだけど……」
「主自身のために主が励むのは当然であろう。その上で下僕たる我までをも思い遣ってくれるなど、そのような召喚主にはついぞ出会ったことがない」

 二の腕を掴まれて胸から起き上がらせられる。
 見下ろしてくる黄金色の瞳が幸せそうな笑みを湛えた。

「主よ。何度だって言おう。我は主を愛してしまったのだ。この胸の高鳴り、言葉にせずにはおれぬ」
「わはあ……。あ、ありがと、レヴィメウス」

 何度も愛を囁かれて、心臓はずっとばくばく鳴りっぱなしで声が途切れてしまう。思えばここまで動悸が激しくなったことも、ここまで赤面したことも今まで生きてきて初めてだった。

(なんだかもうとっくに、初めての経験、たくさんさせてもらっちゃってるな。レヴィメウスを召喚して本当に良かった。絶対に、めいっぱいぬるぬるした最高品質の潤滑剤を作ってあげるからね)

 マージェリィは胸の内でそう固く決意すると、自分を愛すると言ってくれた淫魔にぎゅっと抱きついたのだった。
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