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すれ違いは突然に
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「私がサクッと殺してくればいいのだろう、小娘ではないか」
シュヴァルツの部屋を訪れ、私は事情を説明している。魔王シュヴァルツにとっては関係ないことではないはずだ。
「聖女だもん、シュヴァルツを危ない目にあわせたくない。それに人殺しなんてダメよ」
「なぜだ?今殺さねば内戦になり、もっと多くの民が死ぬ」
シュヴァルツはいつになく真剣な眼差しだ。
「人を殺すと、あなたの魂が傷つくからダメ」
「私に魂なぞない」
「いいえ、あるわ」
シュヴァルツの頭を撫でたかった。
伸ばした手を、シュヴァルツが掴む。
「あまり私を馬鹿にするな、願え。お前の敵なら全て食い散らしてくれる」
「やめて、痛い」
「このままだと、お前もアンリも狂信者に火祭りにあげられるんだろう」
シュヴァルツはもう大きくて、力が強くて、その力を愛する人たちのためにどう使えばいいか迷ってる。そんな子供の姿に見えた。
「対価はお前の口づけでいい」
紅瞳が切なく潤んでいる。
私を掴む腕の力も緩んでいる。
ガタッ
剣を取り落としたのはアンリだった。
「なんだよ、それ。おかしいだろ」
シュヴァルツはアンリの姿を認めると、魔王の姿に変化した。大きな黒い翼を広げる。
私の唇を無理やりこじ開けると、舌を差し入れる。私は躊躇なくシュヴァルツに噛み付く。
「対価はもらったぞ」
窓は割れ、シュヴァルツは飛び去る。
取り残された私にアンリが駆け寄る。
「あのね…!」
「いいから」
アンリは私が割れたガラスを踏まぬように抱き上げ、主寝室へ運んだ。頑なな横顔に、それ以上話しかけられなかった。
シュヴァルツの部屋を訪れ、私は事情を説明している。魔王シュヴァルツにとっては関係ないことではないはずだ。
「聖女だもん、シュヴァルツを危ない目にあわせたくない。それに人殺しなんてダメよ」
「なぜだ?今殺さねば内戦になり、もっと多くの民が死ぬ」
シュヴァルツはいつになく真剣な眼差しだ。
「人を殺すと、あなたの魂が傷つくからダメ」
「私に魂なぞない」
「いいえ、あるわ」
シュヴァルツの頭を撫でたかった。
伸ばした手を、シュヴァルツが掴む。
「あまり私を馬鹿にするな、願え。お前の敵なら全て食い散らしてくれる」
「やめて、痛い」
「このままだと、お前もアンリも狂信者に火祭りにあげられるんだろう」
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私を掴む腕の力も緩んでいる。
ガタッ
剣を取り落としたのはアンリだった。
「なんだよ、それ。おかしいだろ」
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私の唇を無理やりこじ開けると、舌を差し入れる。私は躊躇なくシュヴァルツに噛み付く。
「対価はもらったぞ」
窓は割れ、シュヴァルツは飛び去る。
取り残された私にアンリが駆け寄る。
「あのね…!」
「いいから」
アンリは私が割れたガラスを踏まぬように抱き上げ、主寝室へ運んだ。頑なな横顔に、それ以上話しかけられなかった。
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